季節の変わり目
窓の外に、ふんわりとした陽ざしが差し込んでいた。
「……もう春、かな?」
少女は、まだ少し厚手のコートを羽織りながら、そっと息を吐く。
冬の名残が微かに感じられる朝の空気。だけど、確かに昨日までとは違う、柔らかな風が頬を撫でていた。
クローゼットを開けると、奥の方にしまっていた春のワンピースが目に入る。
淡い桜色のワンピースに、白いカーディガン。
「……そろそろ、いいかな?」
少し迷いながら、コートを脱いで、春の装いに袖を通す。
まだ少しだけひんやりするけれど、心はぽかぽかと温かかった。
「よし。」
玄関の扉を開けると、すぐそばの木々には、小さな桜の蕾がふくらんでいた。
紗月はそっと微笑み、軽やかな足取りで歩き出した。
春の訪れを感じながら――。
呪文
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