シエラの日記
宵闇の中、あたたかな光に包まれながら、いつしか足を止めていた。
先は見えているのに、不思議と前に進む気になれなかった。
ふと、肩先に小さな妖精が舞い降りてきた。
なにも話さないけれど、次第に忘れかけていた想いが静かに胸に広がっていく。
名前も知らないはずなのに、どこか懐かしい気配があった。
足元には黒猫が寄り添っている。
時おりみせるその瞳は、静かにすべてを見通しているようだった。
街のあちこちでよく見かけていたが、今夜はなぜか私のそばを留まっている。
街はしんと静まり返り、聞こえるのは自分の靴音と遠くの街灯のざわめきだけ。
こんな夜に、胸の奥で何かがそっと動き出した気がした。
理由はないけれど、今夜この時間が、いつかかけがえのないものになっていく。
そんな予感が私にはあった。
呪文
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