アヤナギ荘の日常 #47 -Everyday Ayanagiso-
九月に入っても、残暑はまだ色濃く残っている。
「……今日も、空がやたらと晴れてますね」
シロキは本を膝に置き、
リビングのローテーブルに腰を下ろしていた。
そして手元の淡い藍色の皿には、
クロキが昨晩作った水まんじゅうが二つ。
「この涼しげな器だけは、
季節感があって好きなんですよね……」
隣で漫画を読んでいた明芽が、
ちらっと視線を向けた。
「ほうほう。それはそれがしの推し食器、
百均のくせに仕事ができるでござる」
「……推しとか言わないでください。
おまけに百均だったんですかこの皿?!」
そのまま、シロキはひとつ口に運ぶ。
冷んやりした水まんじゅうが、
ほんのりと青い寒天に包まれていた。
「――美しいですね」
小さく呟いた言葉は、空に滲んで溶けていった。
遠くで蝉の声が鳴り、
青い空が今日も変わらず広がっていた。
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