★憐憫
以前は「熾天使(セラフ)」と名乗っていたが今ではリングを取り上げられ朧のように彷徨うだけの存在だ。
雨が墨のように夜を濡らし、風が濡れた羽を揺らす。
彼女の瞳にはかすかな紅の光。血のように滲む知恵の残照。
ただ神の知識を求めただけなのに、どうして追放されたのか。
もはや神を慕っているかどうか自分でもわからない。
問いは雷鳴のように胸を打つが、答えは闇に溶ける。
それでも、セラフィーネは聖書を抱きしめ、この場所から静かに下界を見下ろす。
世界は雨に濡れ、彼女の孤独を墨で染めた絵のように染め上げる。
悲しみと知恵が交錯するその姿は美しくも儚い。
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ちよるんねっこさん
企画名:闇の深い子に参加させていただきます。
https://www.chichi-pui.com/events/user-events/141942bf-a7c4-8b9f-b44d-d72a67fc0cac/
呪文
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