三冬尽く
お付き合いを始めてから、いつだって無口で不器用だった貴方。
1年前、「稼いでくる」とだけ言い残して、帝都行きの切符を握りしめて行ってしまいましたね。
毎月届く手紙には、「息災か」「こっちは大丈夫だ」「必ず帰る」の言葉だけ…。
それが突然、4日前に届いた「今帰る」の手紙。
決して噓をつく人ではなかったから、それ以来、こうして毎日貴方を待ち続けています。
そうしてついに訪れた、待ち焦がれた瞬間…。
雪霞の向こう、見知った大きな貴方の影が見えました。
思わず駆け寄ると、貴方はあの頃と変わらない、不器用な笑顔をくれました。
すると突然、おもむろに貴方は私の左手を取り、薬指に何かをぎこちなくはめてくれました。
それは、素朴で綺麗な小さい指輪…。
「もしかして…これを買うために、帝都へ出稼ぎに…?」
嬉しくて嬉しくて嬉しくて…。
でも、ちょっぴり照れくさくて、柄にもなく貴方を少しだけからかってみました。
「…こんな大切な時くらい、何か喋ったらどうですか?」
そう言って悪戯っぽく笑うと、
「………すまん。」
心なしか赤くなった顔で、困ったように頬をかく貴方。
それが可笑しくて、思わず吹き出してしまう私。
春は、近い。
呪文
入力なし