ぼっちと会える街 第3話
──翌日。
翔太は再び、あの不思議な駅に降り立った。
“夢だったのかもしれない”と思っていた昨日の出来事は、しかし現実だった。
ぼっちちゃんは確かにいた。そして、彼の中で“何か”が変わり始めていた。
「……来てるかな」
ベンチには、誰もいなかった。
ふと、駅の近くの商店街を歩いてみると、小さなカフェが目に入る。
その店の名は──**「STARRY」**。
扉を開けると、心地よいアコースティック音楽とともに、
にこやかな金髪の少女が笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃいませ〜!」
彼女は──伊地知 虹夏だった。
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「へえ、ぼっちちゃんに会ったんだ。めずらしいなぁ」
アイスコーヒーを運んできた虹夏は、カウンター越しに話しかけてきた。
翔太は驚いて言葉を失う。
虹夏もまた、“作品の中のキャラ”ではなかった。そこに確かに「生きて」いた。
「えっと、もしかして、ここ……なんなんですか? みんな、アニメの中の人間なのに」
「ここは、“そういう場所”なんだよ」
虹夏は不思議そうに笑う。
「ここに来る人はね、何かを“失くした”人。心がちょっと折れちゃってる人。でもね、そういう人に、私たちは……少しだけ、寄り添えるの」
「君たちは……現実に存在してるの?」
「うーん、難しい質問だね。でも、翔太くんが“私たちに会えた”ってことは……きっと必要だったんだよ」
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虹夏は翔太の目を見て言った。
「ぼっちちゃん、頑張ったんだよ。人と話すの、ほんとに苦手な子なのに。だから……また会ってあげてね」
翔太は、うなずいた。
彼は、ただのアニメファンじゃない。
あの頃、自分も音楽に救われていたことを──ぼっちちゃんに会って、思い出したのだ。
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店を出ようとしたとき、虹夏がふと手渡してきたものがあった。
「これ、ギターの弦。ぼっちちゃんが『その人に渡して』って」
袋の中には、ピンク色の弦が一本。
それは、まるで彼女の“気持ち”のように感じられた。
「また来てね。待ってるから」
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そして、彼の背後では──ギターの音が、小さく響いた。
(第4話へつづく)
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