避けられた敗戦
場面:宮中、御前会議の広間
若き研究所員が示す図表――資源量の棒グラフ、米国の工業力曲線。
沈黙の後、昭和天皇が静かに口を開く。
👑 昭和天皇
「この戦は、やれば必ず長引き、国を滅ぼすと……そう申すのか」
📊 総力戦研究所員(架空人物・松井)
「はっ。短期で講和できる可能性は極めて低くございます。石油の枯渇は二年、以後は戦う力そのものを失います」
天皇は視線を東條に移す。
👑 昭和天皇
「東條よ、これは虚言とは思えぬ。国体を守る道は他にないのか」
🎖 東條英機首相
(苦渋の表情)「……陛下。戦を避けるは臆病と罵られましょう。しかし、勝てぬ戦に国を投じるは、軍人の本分にあらず」
広間にざわめき。海軍軍令部総長・永野修身が一歩前へ。
⚓ 永野修身
「海軍も……必敗と承知いたしました。ゆえに、開戦準備ではなく、外交継続こそ急務と考えます」
会議は異例の一致で「南進一時凍結・米国との交渉継続」を決定。
2. ワシントン交渉(1942年春)
場面:ホワイトハウス、ルーズベルト大統領執務室
📜 野村吉三郎大使
「日本は南部仏印から撤兵し、中国戦線も拡大いたしません。その代わり、石油禁輸を緩和いただきたい」
🇺🇸 ルーズベルト大統領
「いいかね、野村。アメリカ国民は強硬だ。だが、我々の敵はまずヒトラーだ。極東で無用の戦を望まぬ。…蒋介石への支援は続けるが、石油輸出は段階的に認めよう」
その背後で、ハル国務長官が眉をひそめる。
🇺🇸 ハル
「大統領、対日融和は国内で批判されましょう」
🇺🇸 ルーズベルト
「批判など承知だ。今はナチスを倒すのが先だ」
握手が交わされ、日米は全面戦争を回避。
3. 重慶、蒋介石の執務室(1943年)
📜 蒋介石
「日本は撤退を始めた。だが満洲はまだ奴らの手にある。アメリカは独逸と戦っている……我らはどうすべきか」
💃 宋美齢夫人
「総力戦研究所とやらが彼らを縛ったのですわ。今は息を整えるのです。中国は時間を味方にせねば」
蒋は頷くが、顔には苦悩の影。彼の頭上には「長期内戦」という未来が垂れ込めていた。
4. 戦後序幕 ― 日米安全保障協定(1947年、東京)
場面:迎賓館
🎖 東條英機(退任後の重鎮)
「敗北の戦を避けられたのは、陛下の御英断と、研究所の冷徹な数字ゆえだ。今こそ我らは米と共に歩む」
🇺🇸 トルーマン大統領
「アジアの赤い波を防ぐのは、日本と朝鮮の自由な国々だ。諸君の決断は、世界の歴史を変えた」
拍手とフラッシュの中、条約が調印される。
そこにいた松井(元研究所員)は小声で呟いた。
📊 松井
「数字で戦を止められると、誰が信じただろう……」
呪文
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