番外編「朝一の日課 」
夜が明けきる前、森はまだ青みを帯びた薄闇の中にあった。
湿った空気はひんやりと肌に触れ、葉の露が細やかな光を宿している。
彼女は、眠りから醒めるとまず焚火跡へ向かう。
これが、無人島で暮らすようになってから数日経った、彼女の“朝一の日課”であった。
前夜の焚火は、灰をかぶせて消えぬようにしてある。
しゃがみ込み、そっと灰をかき分けると、奥で微かに赤い光が瞬いた。
「……よし。残ってる」
それは、夜を越えて生き延びた小さな熾火(おきび)だった。
新しい火を起こすよりも、この熾(おき)を育てる方がずっと楽で、確実である。
朝露で湿っていない細い枯れ草をひとつかみ取り、熾のそばにふわりと寄せる。
口をすぼめて、息を静かに吹きかけた。
湿った朝の空気に負けないように、丁寧に、何度も。
やがて、枯れ草の奥で淡い橙色の火がひらいていく。
まるで息に応えるように、揺らぎながら大きくなる。
その上へ、小枝を数本そっと重ねる。
急ぎすぎれば煙だけになり、湿気で火が癇癪を起こす。
だから彼女は、いつものように落ち着いて、火の機嫌を確かめながら育てていく。
ぱち、と小枝が弾け、焚火は確かな炎となった。
「うん……今日は、いい火になりそう」
小さく燃え上がる炎をニコリと見つめ、
立ちのぼる温かな光に手をあてながら、体の芯がほぐれていくのを感じた。
水を温める準備も、朝の作業も、この火があれば心強い。
熾から火を蘇らせる――
それは彼女にとって、危険な無人島の生活を繋ぎとめる“確かな習慣”であり、
新しい一日を迎えるための、小さな儀式のようになっていた。
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猫乃つづりさんの企画「ゆるりと焚き火」に参加させていただきます!↓
https://www.chichi-pui.com/events/user-events/af9b70d2-02a1-ee45-0357-02018f150b0b/
という事で、今回はつづりさんの企画と絡めて、本編時系列から外れて番外編をお送りさせていただきました✨
2日目以降のキャプションが全然進んでないとか、そんなんじゃないんだからね!!
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