アヤナギ荘の日常 #14 -Everyday Ayanagiso-
通りに広がる商店街は傘の花が咲いていた。
舗装された石畳は雨で色濃く濡れ、
所々に水たまりがきらめいている。
「地元密着で値引き率高めって噂だったので…!」
手にカゴを提げたシロキは気合い充分な笑みを浮かべていた。
「シロキ殿、顔がもう戦闘態勢だぞい」
その横で、明芽はすでにお惣菜を三パック抱えている。
「いえ、美鳥こそ…手に三つも
お惣菜持ってるじゃないですか⁉」
「これは…昼と夜と夜食だ!」
店先からは、焼き鳥の匂いや揚げたてのコロッケの香りが漂い、
あたりに微かに揺れる湯気が立ち上る。
シロキは真剣な表情でじゃがいもを吟味していた。
「ふむ…大きさの割に価格が…皮の張りも見なきゃ…」
「それがし的にはあっちの人参がオススメだな。
なぜなら──色が美しいから!」
「根拠が…アバウトすぎます!」
ざわめきと雨音の混じる市場の空気。
ふたりの掛け合いはどこか愉快で、
やがて気づけばカゴは溢れんばかりになっていた。
「……帰り、荷物持つ係お願いしてもいいですか?」
「おや? それはシロキ殿の甘えってやつですかな?」
「……そのまま置いて帰りますよ、美鳥」
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