6月20日は10秒の壁が破られた日
それは100m競争において『人類最速の男』の栄冠を手にするために越えるべき最初のハードルです。
この壁を人類が初めて乗り越えた日、それが1968年6月20日。
全米選手権準決勝にてアメリカのジム・ハインズ、チャールズ・エドワード・グリーン、ロニー・レイ・スミスの3名が9秒9(ストップウォッチによる手動計測)を記録し、遂に100m競争は100分の1秒で勝者と敗者が決定する超シビアな陸上競技へと変貌しました。
その後、より精密な計測方法の電動計時が採用されることになり、前述のジム・ハインズは1968年メキシコシティーオリンピック男子100mで9秒95の世界新記録を出して優勝しています。
またこの決勝レースはオリンピック史上初めて全員が黒人選手だったことでも知られ、短距離走は黒人選手が圧倒的に強いという構図が早くも成立しています。
その後再び10秒の壁を破る選手が現れるまでには9年、新たな9秒93という記録までには15年もの歳月を要しました。
1980年代にはスポーツ科学が発展してトレーニング方法の改良と専用シューズの開発が進み、1983年に9秒97を記録したカール・ルイスを契機に一気に10秒の壁を突破する選手が増加。
1991年世界陸上男子100m決勝では遂に6人もの選手が9秒台をレコード、優勝したカール・ルイスは9秒86の世界新記録を打ち立てるまでに至ります。
その後は文字通り100分の1秒単位での記録更新が進み、1999年にモーリス・グリーンが9秒79を記録。
アファサ・パウエルは2005年から2007年までの間に自身の記録を9秒77から9秒74にまで縮めます。
そして2008年、ヤツが現れました。
その男の名はウサイン・ボルト。
2008年に開催されたニューヨークの陸上グランプリで彼は9秒72の世界新記録を突如樹立し、2位以下を大きく引き離して優勝。
そして同年の北京五輪男子100m競争では決勝にもかかわらず早々と他の選手を引き離す独走ぶりを発揮して全世界の観戦者(とスポーツ関係者)を驚愕させ、余裕すら浮かべるウイニングランでゴールイン。
それでも自らの世界記録を上回る9秒69を叩き出し、あっさり9秒7の壁すら破ってしまいました。
なおボルトは男子200m決勝でも世界新記録で金メダルを獲得し、100m・200mを同時に世界新記録での優勝というオリンピック・世界選手権を通じて史上初の快挙を成し遂げます。
その後ボルトは2009年世界陸上100m走で9秒58を叩き出し記録をさらに更新。
これは現在でも全く破られていない(というか9秒6台がボルト以外は誰も到達していない)アンタッチャブルレコードとして15年以上もの間君臨し続けています。
ちなみに日本人選手は1998年に10秒00が記録されて以降19年もの間日本記録として維持され続け、日本にとって10秒の壁は世界への行く手を阻むあまりにも高い壁でした。
しかし2017年に桐生祥秀が9秒98で遂に10秒の壁を突破。
2019年にはサニブラウンや小池祐貴など9秒台を記録する選手が現れ始め、確実に世界は近くなっています。
「Continue trying anything you do(あなたがすることなら何にでも挑戦し続けてください)」
2017年の引退会見で、ウサイン・ボルトは世界中の子供たちに向けてそんなメッセージを残しました。
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