ヒノイのクノイチ その7「“眷属”との遭遇」
身の丈数メートルの巨躯を持つそれは、天使の様にも悪魔の様にも見える、奇妙なカタチをしていた。
怪物は身体強化を使っての斬撃も、爆薬による攻撃やトラップによる奇襲もものともしない。
「直撃すれば重傷は必至」レベルの怪物の一撃躱し続けたクノイチだったが、そろそろ手詰まりになっていた。
(ダメもとでござるが…試してみるか!)
彼女は懐から小さなボールを取り出すと、風上に奔った。
「南無三!!」
裂帛の気合とともに投げつけたボールが怪物の眼前で爆ぜた。
間髪入れず、何個ものボールを怪物に向かって投げつける。
甘い香りが漂う、桜色の靄が怪物を包み込んだ。
そして数秒の沈黙ののち、轟音とともに怪物が倒れる。
“幻術・桜吹雪”
吸引した者に幻覚作用をもたらす猛毒を使った奇襲。
過度に摂取すれば命に関わる代物である。
直接攻撃が効かないならば…と直感に従ってみたが、上手くいった様だ。
「お…終わった…!」
大の字になって倒れ込むクノイチ。
彼女が怪物の正体を“悪神の眷属”と知るのは、もう少し後の話である
呪文
入力なし