1000年エルフメイド、その正体――
その邸宅を1人で守るエルフのメイドがいる
彼女は千年という時を生きていたという
彼女に会ったものが言うには物静かなただのメイドだと誰もが言う
ただし――
森の自然を犯し、命を奪おうとするものには容赦ない
そしてその日も事件が起きた
若き冒険者の声が響く
「この森を燃やすなんてやめろ!」
しかし欲にかられた人間の権力者に金で買われた悪漢たちには言葉は通じない
彼らは森の動物たちを殺し森を燃やそうとする
「この森の大地の底には高い魔力を発する魔導鉱石が眠っているって言うぜ。森を焼き払って石を掘り出すんだとよ」
「森に火をつけるだけで夢のような大金だ! やらない方がどうかしてるぜ!」
若き冒険者は彼らに斬られて重症を負う。そして、まさに火をつけようとした彼らの前に、1000年の時を生きたと言われるエルフのメイドが現れる
「お待ちなさい愚か者たちよ」
「なんだおめえは?」
「ただのメイドが何ができるんだ?」
「お前も一緒にやっちまうぞ?」
悪漢たちはニヤニヤと笑う。そんな彼らを前にエルフメイドはなおも語った。
「森を燃やし、命を奪うというのなら、因果応報を受けても致し方ありませんね?」
その言葉を発し終えると同時に〝その姿は変わる〟
「な、なんだ?」
「ものすごい魔力だ!」
「ドラゴンの気配もする!?」
「神か? 魔族か?」
悪漢たちは真実を知ることなく〝彼女〟の羽ばたき一つで光の粒子に代わり姿を消した
若き冒険者は彼女の力で命を取り戻した
「あなたは一体?」
エルフメイド――光の神の気配と、ドラゴンの光翼を持つ彼女は真実を語った
「私は光の神の使いの光翼のドラゴン、1000年前にこの森を守るために命を失ったハイエルフの少女と同化し、それ以来ずっとこの森を守り続けています。この森はこの世界に始まりの命をもたらした〝聖地〟――穢すわけにはいかないのです」
驚く冒険者に彼女は告げる
「さ、帰りなさい。そして私のことは忘れなさい」
「そんな、もう会えないのですか?」
「ええ〝私には〟――ですがこの森を守るエルフのメイドならあの魔法邸宅にいつでもいるはずです」
そう彼女は言葉を残して姿を消した。
若き冒険者はこの事実をずっと沈黙を持って守ったという
呪文
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