【夢エリ】黒猫騎士、走る 【ゆるコラボ最終日!】
とても大事なことを、伝えなきゃいけない人たちがいるんだ」
夢幻宮崩壊の予兆が始まる少し前に、時間は遡る。
黒猫騎士カペラニカは魔王軍のものとみられる厩の中で馬を見つけると、その背にまたがろうとしていた。準備の途中で主はどこかに消えてしまったのか、鞍には鐙がついていなかったがこの際仕方ない。
幻影の魔宮は広く、蜃気楼の満ちるその中は不思議な光景に満ちていた。地下迷宮に屋外の庭園や街、別の城や神殿まである。
なぜだか目の前に現れた月下の町...どこかクロニャンコ帝国の街並みに似たあの町に現れた緑髪の猫耳剣士の印象は強烈だった。
“翠玉剣”(すいぎょくけん)のジュネティア。常夜将軍の一騎、異能を持つ3将“雪龍剣三座”のひとりと名乗った彼女はご丁寧に口上を述べると、緑に輝くレイピアで仕掛けてきた。圧倒的な速剣、カペラニカの弓矢が間に合わないほどの速さ。割って入ってくれた仲間のお陰でカペラニカは難を逃れたが、月下に踊るあの緑の残光は強烈だった。
常夜将軍には鞭を使う者が多いと聞いたが、剣においてはかなりの手練れ。集まってくれた遊撃部隊の勇士たちの中の剣使いたちとも互角以上。もしかしたらーーウサ王国随一と謳われる円卓騎士団の騎士エリアーニャとさえも互角かもしれない....。
ほんの小手調べで様子を見ただけだったのか、数合撃ちあっただけで将軍ジュネティアは退いてしまった。片目をつぶり、悪戯っぽくご丁寧に頭を下げる挨拶と共に。
その後また濃くなった幻影の霧のせいで、カペラニカは遊撃部隊の本体と分断されてしまったのだった。他のメンバーも散り散りになり、小集団で進んだり、また合流を果たしているのかもしれない。
夢幻宮を彷徨い、いくらかの魔物を退けたのち、騎士カペラニカは『魔王軍カフェ』と言う不思議な場所に辿り着いた。古代文字でpuiと刻まれた不思議なコインを払うと誰でも一息つける店。
そこで会うことができたのは意外な人物...“隠密の魔女”カナビスであった。金色に輝く髪と金色猫耳に尻尾の娘、クロニャンコ帝国出の密偵。彼女の武器は剣でも弓矢でもなく情報だった。時にその金色の耳を黒く塗り、魔王の傀儡と化した黒猫騎士団内部やこの夢幻宮で、様々な情報を集めていた密偵。
カナビスのもたらした情報は遊撃部隊にとって極めて重大なものであった。
クロニャンコ帝国で弱き者のために剣を振るう義の剣士、路地裏の英雄だったジュネティアと常夜将軍ジュネティアは同一人物。魔王の宮廷との密約は、魔王の統べる“彼の地”の国の一部の譲渡。だがそれは、果たされる確証のまったくない空虚な約束であると。
そしてカナビスは不思議な小袋を託していた。希少な古代の魔香料“魔タタビ”。滅んで久しい緑猫の王国の民や高貴な血筋の者によく効くという。これがあれば、あの翠玉剣のジュネティアの圧倒的な剣技をしばらく封じられるかもしれないとーー。
カペラニカも薄々は感じていた。彼女も裏町の英雄ジュネティアの名は知っていたのだ。今にして思えば、剣を交える前にわざわざしてきた、あの悪戯っぽい挨拶も、高貴な血筋の者ゆえのものだったのだろうか...?
そして、別れ際のカナビスの横顔がカペラニカは気に掛かっていた。もう疲れた、呪いを解くための旅に出ると言っていたあのどこか寂しそうな表情は...誰か、大切な人を失った者特有のものではないだろうか。久しく会っていなかったが、確か彼女には...
「今はこちらの方が重要だ。集中しよう」
頭を振ると、黒猫騎士カペラニカは目の前の現実に戻り、馬の手綱を取った。
遠見の水晶球はなかったが、魔法の伝書鳩や魔法使いたちの使い魔、謎のお化けさんたちの働きによって、情報は錯綜しつつも徐々に集積しつつあった。
魔王ミオタンの宮廷で強敵と思われるのはその側近、蛇腹剣使いの“変幻の”アイコーン。既に遊撃部隊の腕利きの青髪の剣士が交戦していた。
そして名前が判明している常夜将軍が全部で16人。“翠玉剣”のジュネティアたち3人は異能の3将“雪龍剣三座”として数えられ、どうやら別扱いらしい。
3人を引いて常夜将軍は13人、人呼んで“常夜将軍十三将”。うち最後の2人は、異世界から召喚された異形の頭を持つ怪異だという。
そして情報では、十三将のうち3人はこの夢幻宮ではなく、“陰鬱な黒城”と呼ばれる場所にいるともいう。とすると残りは10人なのだろうか。
そしてカペラニカのそばにふわふわと漂ってきた謎のお化けさんが、最新の情報を教えてくれた。常夜将軍の中の智将には既に魔王側の劣勢を悟り、いつの間にか姿をくらました者までいるともいう。
残りは9人か。誰かは倒されているのか、それとも遊撃部隊側が誰か倒されてしまったのか。武術家ランランとその師匠リンリンが、将軍の中でも腕利きの一人、“魔王の右腕”アオイーヌと交戦中ということであったが...
「行こう、遊撃部隊のみんなの元へ。エリアーニャさんの元へ。カナビスが手に入れてくれたこの大切な情報と、この小袋を届けるんだ」
黒猫騎士カペラニカは鐙のない鞍へ、勢いを付けるとひらりとまたがった。手綱を引くと、黒馬は一声鳴いて走り出した。
幻影と神秘に満ちたこの広い夢幻宮のどこかで、今もそれぞれの戦いが、それぞれの物語が続いている。
旅する黒猫騎士と主なき黒馬は、魔宮に満ちる妖気を吹き散らす一陣の風となり、駆け出していった。
時に夢幻宮最後の日。
「魔王堕つ」の悲報が魔宮に響き渡り渡るより、しばし前の出来事であった...
『夢幻宮のエリアーニャ』
汝、この物語の結末を見届けよ。
---
という一幕ということで...
事前のコラボ募集→ https://www.chichi-pui.com/posts/692aec4f-e6ea-47c1-a3c1-cfe9bd53e64b/
オープニング作品『夢幻宮のエリアーニャ』→ https://www.chichi-pui.com/posts/b732732e-aa67-48ee-aa78-b15545770e1c/
フィギュアと一緒に参加者一覧(随時更新しています)→ https://www.chichi-pui.com/posts/be160e53-7e1e-47f6-b880-15250064de72/
結末に向けたストーリー大枠と指針→ https://www.chichi-pui.com/posts/f3ac0934-98bd-4d8d-ae52-038448a7f343/
ストーリー終盤の展開の指針のヒントをいろいろ書いておきましたところ...テトラポッドさんの密偵キャラ「隠密の魔女カナビス」がこの設定をパーフェクツに活かしたサイドストーリーを描いてくださいましたのでアンサー的な何かです!(/≧▽≦)/
『【夢エリ】黒猫への贈り物〜魔女カナビスの顛末』 https://www.chichi-pui.com/posts/4a7a860e-31a7-4b41-af83-77cc5feda3a8/
隠密の魔女カナビスの最初の作品→ https://www.chichi-pui.com/posts/659b7786-c8b2-4239-a390-863cad9955eb/
カナビスとカペラニカが話している常夜将軍“翠玉剣”のジュネティア→ https://www.chichi-pui.com/posts/eba20071-5a87-44cd-869c-5e7a0d9e0612/
ここで終盤の鍵を握るっぽい重要キーアイテム“魔タタビ”が爆誕!😆
ジュネティアを演じているジュネットさんはサービス精神が旺盛なので、終盤の裏切りイベントの頃にきっとこの“魔タタビ”がドラマチックに使われて、作品にならないところでもあんなことやこんなことがきっと起こるのでしょう...と妄想するのです(・ω・。)。。oO
【追記】熱い投稿に応えてのアンサー作品を昼投稿でしたが、2025年9月7日のStable Diffusion XLデイリーランキング18位を疾走しました~🐎
呪文
呪文を見るにはログイン・会員登録が必須です。
イラストの呪文(プロンプト)
イラストの呪文(ネガティブプロンプト)
- Steps 60
- Scale 7.5
- Seed 1587598981
- Sampler DPM++ 2M Karras
- Strength 0.65
- Noise
- Steps 60
- Scale 7.5
- Seed 1587598981
- Sampler DPM++ 2M Karras
- Strength 0.65