両親へ
「ヒェァ☆ ご両名いらっしゃ~い☆ ユズユズ~♪ ティープリーズだ☆ お久しブリ☆」
冬なのにアロハシャツに短パン姿。サングラスに大きな数珠を首から下げている……
規格外の格好をしたこの人は……超古代からこの油山の土地を守る、れっきとした土地神様なんよね……
あっは……あははは、この謎の激しいパリピ感――殺伐とした事件やら任務やらで多忙だったから、な~んか久しぶり感がすごいや。
『マスター、伏せしましょうか?』
すると、超古代のアンドロイド、『ユズリハ』さんが、千観様の頭を摘まんで地面に叩きつけ、足で頭を抑えつけた。
「HAHAHA~♪ ユズユズ~、こっちのリアクションガン無視☆」
『まったく! 数少ない良識あるお客様なのですから、大事に接してくださいねぇぇぇ!?』
そして、踏んだ足の裏から波動砲を発射する……千観様、真っ黒こげ……地面にも穴が掘られる……どうなっちょるとこれ?
「ユズユズってば、久しぶりに会えて、メッチャバリ喜んでんじゃ~ん☆」
『うるさい! クソマスター! ……すみません、葵様、ラーヴィ様。この男落ち着かせますので、客間にてお待ちください……』
ウチたちが客間に向かうまでの間、地球上で起きたら駄目な音が後ろから響いてきている……
「……変わらないな、あの方は」
「あはは、あははは……千観様のあのノリだけは絶対慣れないや」
* * * *
それから、通常モードに戻った千観様と挨拶を終えた後、ウチとにぃにはお母さんとお父さんのお墓に向かった。地上よりも冷たい風だけれど、優しくウチたちを迎えてくれるようにふいている。仏の座やナズナの花が、優しく霊苑を彩り、故郷に帰ってきたような心地になる。
「まぁ、ああいう態度だけれど、この霊苑の霊たちはみんな穏やかだな……」
「手腕はホント、すごかもんねぇ~。にしても」
『悪い悪い☆ 俺も会えるの嬉しすぎてなぁ~☆ 今でも嬉しくて仕方ねえんだ。あれだけの試練と死線を乗り越えた君たちにまた会えるなんてな』
って言ってた。結局は、千観様は、ウチたちのことがお気に入りなんやね。
ユズリハさんも、アンドロイドなんだけれど、喜びの気配が駄々洩れてた。
「なんやかんや、歓迎されたってことでイイんかな?」
「……そうだな、そう捉えるしかないだろうね」
ウチたちは顔を見合わせて、互いに苦笑いをした。
そして、ウチの両親のお墓に到着した。
澄み渡った冬の景色は、眼下に映る福岡の街並みを、美しく見せてくれた。
空気中の水蒸気が、キラキラと陽の光に反射していて、周辺を綺麗に飾っている。
深呼吸をすると、寒さからすこし”つん”と、なったけれど……
肺に空気が満たされると――
「はぁ……空気が美味しい」
思わず感想がこぼれた。
両親が眠るお墓は、千観様が日々お手入れしてくれていて、ピカピカの状態やった。
にぃにが手にしたお供え物の『梅が枝餅』を置いて、ウチは献花台に青バラをベースに白山茶花やストックを一緒にラッピングしてもらった献花をお供えした。
にぃにの提案で、とても清涼なお花を供えられた♪
「にぃに、ありがと♪」
「ん? 何がだい?」
ウチはにっこりと、にぃにお礼を言った。
色んな機転がきいて……ウチの両親のことも大事にしてくれる。
ねぇ、お母さん、お父さん。ウチの愛する人っち、すごく素敵やろ♪
それと……月美お姉ちゃんからも、両親へアクセサリーのお供え物。
椿咲からは、綺麗な栞。ミントちゃんからは感謝のお手紙。
まほからも、祈りの込められたお守り……それから――
アウディお父さんに、ルミィアちゃんからも。
さらに、佐賀の鮫鬼お母さんに、熊本の瑠奈からも――
縁した人みんなが、お供えを届けてくれていた……
ウチは、自然と涙が込み上げてきた……
「ねぇ、お母さん、お父さん。ウチね?」
16歳になったと。ねぇ、どう? 今のウチのこの姿。
そっちでも、お母さんとお父さんは仲良く過ごしてる?
もちろん、そうよね♪
記憶が戻ってから、1年と半年経つんかな?
たっくさん! 色々なことあったけど、ウチたち無事乗り越えたんよ♪
「ねぇ、いっぱい、お話しよ……お母さん、お父さん――」
沢山話したいんよ。隣に居る、愛する人と、また、愛し合っている家族みんなのことも――
ウチね、みんなに愛されてる。ウチも、みんなを愛してる。だから、安心しててね。
呪文
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