地獄の門番
「訴状によれば、汝は地獄から来た悪魔や堕天使どもを現生に解き放ち、黙示録を刻みたいとあるが相違ないか?」
老爺は頷く。迷いのない回答に門番は少し狼狽したようだが、改めて訴状を見る。
「窓の外に見える禍々しい者たちが現生に放たれるのだ。再度、汝に問う。本当に相違ないか? 今なら門を閉じることも可能だ。」
老爺は首を振った。老爺には家族がいる、否あった。皆、組織によって消されてしまった。
老爺本人も、ガンで余命1ヶ月と言われている・・・・・と訴状にはある。
門番は老爺をじっと見つめると言った。
「あのさあ、爺さん。あんたの不幸は分かるが他人を巻き込むことはねえだろう? 既に相手組織は壊滅しているし、あんたの家族は戻らねえ。いい歳をして、まだ中二病はねーだろう?」
さっきの威厳はどこえやら、ここで門番の口調が急にくだけたものになった。
老爺は門番の態度急変に目を白黒させていたが、やがて再度首を振る。逆に話が違うとの怒りの表情が浮かんだ。
門番はため息をついた。さも残念との思いが見えた。
「そうか、意思は変わらんか・・・。うーん、では仕方ないか。汝の願いをかなえよう」
老爺の顔がぱっと明るくなった。そのとたん黒い濃霧が老爺を包むと老爺の姿は消えた。
門番は、あーあとため息をつく。
老爺は自分だけの妄想の中で、この続きをしているだろう。
余命1ヶ月の間、意識を失って覚めない至福の妄想の中で満足し、死んでいくだろう。
まあ、本当に余命1ヶ月ならそうだろう。門番の鑑定としては、老爺は余命どころか本当はピンピンしていると見た。
狐と狸の化かしあいのようなものだ。あの老爺は化かされたことを知らずに妄想の中で朽ちていくのだ。
「地獄の門なんてさあ、個人の訴状なんかで開くわけないだろ。そもそもここは門じゃなくて、理由つけて追い返す場所なんだもん。地獄の執行官も変な商売始めやがってさあ・・・。まあ、結構な金が入るけどさあ・・・」
そこへ、蝙蝠が親書を持って飛んできた。門番は親書を読むとうんざりとした顔をする。
「何? 今日まだ2件もあるの? どうして人間と言うのは、自分が特別だと思うのかねえ。散々、悪さしたくせに自分が不幸になると他人を巻き込むなんてさあ。あっ、悪いな「承知しました」と伝えてくれ」
蝙蝠は、サインを持って飛んで行った。
門番は、定位置に戻るとくだけた表情を恐ろし気な真顔に変える。
そして、周りに火が付き、煙が充満して禍々しい演出が整った。そして重い声で発言する。
「次の者をここへ」
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