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スタジオには、いつものオープニングテーマとジングルが流れていた。

ハイテンションラジオのテーマ〜2nd
(suno)
https://suno.com/s/42Zb0rCYT0VaLAkJ

「アキナの〜〜〜!ハイテンションラジオ〜〜〜!!」

だが、その高いテンションの声は響かない。代わりに、穏やかで落ち着いた声がマイクを通じて届く。

フユキ「こんばんは。今日は、私フユキが代打でお届けします。・・アキナちゃんは、体調不良のため、今夜はお休みです」

それだけ言うと、フユキは余計な説明を避けるように話題を変えた。

スタジオの外、廊下のベンチで座っていたナツミが溜息をつく。

ナツミ「・・・あのテンション、やっぱ無理あったんだよ」

ハルネ「最初は良かったけど、最近ちょっと空回りしすぎ」
ハルネも、やれやれと肩をすくめる。

カエデは珍しく難しい顔をしていた。
カエデ「・・・アキナちゃん、前のほうが好きだっただべ」

誰よりもアキナを庇うはずのカエデの言葉に、全員が沈黙した。

フユキは、静かに目を閉じてマイクに向き直る。ノーコメント。それが、彼女なりの優しさだった。

数日前の「Four seasons病院!」撮影現場。
明るい照明の下、グラビア用の新衣装を前に、ナツミの妹・ナツキが興味津々な目を向けていた。

スタッフ「ナツキちゃん、せっかくだし衣装、着てみる?」

ナツキ「え、あたしが!? いや〜、似合わんって!・・いや、でも、ちょっとだけね!」

アキナ「いいじゃん!若さの特権〜」

アキナがいつもの調子で笑いながら促した。

ナツキが試しに衣装を着て出てくると、スタッフたちからも歓声が上がる。そんな中、アキナはふと口にしてしまった。

アキナ「うわ〜ナツミちゃんより似合ってるかも!」

ナツミはその場で笑って見せた。だが、その笑顔は少し引きつっていた。

夜。アキナの部屋。

カーテンを閉め切った薄暗い室内。スマホの画面だけが、ほのかに彼女の顔を照らしている。

SNSには、自分が投稿したハイテンションな動画が並んでいる。ファンのコメントも、再生数も、文句なしだ。

それなのに。

アキナ「わたし……何やってんだろ……」

声が、涙に混じる。
あの一言が、ナツミを傷つけたのではないかという罪悪感が、胸に刺さる。アキナは優しい心の持ち主であるが、メンタルが弱い。ラジオでも、無理に明るくふるまっていたことが、少しずつ、周りを遠ざけていた。

アキナ「前のラジオでも少しナツミの好感度下がるような事を言っちゃったし、このまま、嫌われちゃったら・・」

(前回)アキナのハイテンションラジオ〜最近、扱い雑すぎ問題!編〜
https://www.chichi-pui.com/posts/4441805d-3dc8-41f0-88ac-2f150e349aa7/

アキナ「あと、単発ドラマの「魔法天使アキナの狂った思考」の撮影の時、みんなの目線が冷たかったような・・」(自意識過剰・・)
https://www.chichi-pui.com/posts/ae2a317e-d379-4fb0-be7b-95edb2af0d04/

重たい布団を被り、アキナはそのまま、眠れぬ夜を迎えた。

翌日、マネージャーから郵便が届いた。封筒には、子どもらしい丸い文字。

「アキナちゃんへ。わたし、学校で友だちができなくて、ひとりで泣いてたときに、アキナちゃんのラジオを聞いたよ。」

そこには、まっすぐな言葉が綴られていた。

「アキナちゃんの声、すっごく元気で、笑ってて、わたしも笑っちゃった!」

「でもね、アキナちゃんがつらかったら、ムリしなくていいよ。わたし、どんなアキナちゃんでも好きだよ!」

アキナは、声を上げて泣いた。
誰かのために頑張ったつもりだった自分を、やっと誰かが見てくれていたことが、胸を打った。

その夜、震える指でスマホを持ち、ナツミにメッセージを送る。

アキナ「あの時、ひどいこと言ってごめんね。本当に後悔してる。ちょっと、自分の心を休ませる時間が欲しくて、迷惑かけてごめん」

すぐに、返信があった。

ナツミ「アキナちゃん、大丈夫だよ。あの時はちょっとカチンときたけど、嫌いになったわけじゃない。でも、ムリしないでよ。素のアキナちゃんが好きだから」

一週間後。

スタジオに再び流れる、アキナのオープニングテーマ。

アキナ「アキナの〜〜〜……」

音楽が止まり、少し間があって、アキナの落ち着いた声が響いた。

アキナ「こんばんは。アキナです。……ちょっと、お休みをもらってました」

リスナーに、あの時のことを少しだけ話した。ナツキの件も、ハイテンションキャラのことも、無理してたことも。

アキナ「今日は無理をしないで正直に話そうと決めました。」

言葉の一つ一つが、丁寧に、心に届いていく。

スタジオの向こうで、フユキが静かに微笑んだ。

撮影現場に戻ってきたアキナを、ナツミが無言で抱きしめた。

ナツミ「バカ。でも、戻ってきてくれてよかった」

ハルネはツンと顔を背けて、
ハルネ「・・ま、べ、別に心配なんかしてないわよ。」とぼそっと言った。

カエデは満面の笑顔で、
カエデ「やっぱりアキナちゃんは笑ってる方がええべ〜」
と飛びついた。

フユキは、少しだけ目を細めて言った。

フユキ「よく、帰ってきてくれたわね」

アキナは、少し照れたように笑って、小さく呟いた。

アキナ「・・・ただいま」



数日後、

アキナ「アキナの〜〜〜!ハイテンションラジオ〜〜〜!!」

アキナ「なんかこの間は湿っぽくてごめんね〜今日からまたハイハイハイハイハイテンションで行くわよ〜キャハ〜!!」

通常営業に戻ったとさ。めでたしめでたし?キャハー。

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