待ちぼうけの終わり方
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夕暮れの校庭。
少女は制服の袖を握りしめ、膝を抱えて座っていた。
空は茜から紫へと移ろい、木々の影が長く伸びていく。
約束の時間から、すでに1時間が過ぎていた。
彼は来ない。
少女は、何度も時計を見ては、目を伏せた。
胸の奥がじんわりと痛む。
涙が頬を伝い、制服の襟を濡らす。
「やっぱり、迷惑だったのかな……」
その言葉が風に溶けた瞬間、足音が聞こえた。
少女が顔を上げると、夕陽の中に彼の姿があった。
息を切らし、髪を乱しながら、彼は駆け寄ってくる。
「ごめん、遅れた……!どうしても抜けられない用事があって……でも、どうしても来たかった」
少女は言葉が出ず、ただ彼を見つめる。
涙が止まらない。けれど、それは悲しみではなかった。
彼はそっと、ポケットから折りたたまれた便箋を取り出す。
「返事、書いたんだ。ちゃんと伝えたくて」
少女は震える手でそれを受け取り、封を開ける。
そこには、丁寧な文字でこう綴られていた。
「僕も、君のことが好きです。ずっと前から。」
風が吹く。
木々が揺れる。
空は、やさしい夕暮れに包まれていた。
少女は微笑む。
彼も微笑む。
二人の間に、静かで確かな光が灯った。
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POST-MAN (Lv.6)さんの「キミが流した涙の理由」企画に参加
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