隠すために、出している……魔法検閲・魚2
「おかあさん、どうして魚が空を泳いでるの?」
「ほんとうは水にしかいないのにね。
でも今日は、女の子のだいじなところを隠すために泳いでるのよ。」
「どうして隠すの?」
「見えちゃうと、男の人が剣を抜いちゃうからね。」
「どうして剣を抜くの?」
「抜くと気持ちいいからよ。男の人って、定期的に抜かないと落ち着かないものなの。」
「じゃあ、なんでわざわざ隠すの?」
「……それはね、みんなに見てもらうためよ。
もし魚がいなかったら、それは“R18”になってしまうでしょ?
魚が覆うからこそ、多くの人がのぞき込めるの。」
「じゃあ出さなきゃいいのに」
「出さなければ隠せないの。
隠すために出している──そうして世界に届くの」
「見てもらうために隠していて、隠すために出してるの?」
「そうよ。人間は、社会は、思ったよりも複雑よ」
「ふしぎだね」
「ええ、それが『魔法』なの」
呪文
入力なし