小説『月島基帆心ー黒の翼ー』【ニャンノ世界】
『月島基帆心ー黒の翼ー』
元・芯夜境戒の叶徒だった者、
現・才色協会 Schwarz協会所属
黒の剣の前衛部隊の一員として
月島翼基と共に戦っていた
芯夜境戒の武装シスター達の目は
灰色で、尚且つ、曇天じみており、さながら、機械人形であった。
信念たるものを持ち合わせども、
人間たる機能を極限まで捨て去った傀儡、人形…屍せども、黙示録を引き起こさんがために進む様は屍者の波であり、終末における事変の象徴とでもいうかの有り様であった。
鳥仮面の叶徒として、基帆心も人間性をかなぐり捨てて、戦っていた…
普通に生きるのが困難な世の中だから、何か捨てないと、生きることができないくらいに、過酷で、心は深淵の淵に捨て去った。
この世は都合良くはできていない…
歪みの中で構築されている…
その歪みの中で真っ白で真っ黒で
灰色の中でカツ丼をくれたのが、
敵であるはずの月島翼基であった。
鳥仮面の叶徒として、その手は黒く汚れ…壊れていたはずの彼女の心にあったかな炎が灯る。
戦場とは非情…
しかして、日常とは煌めき
偽りの奇跡によって
動かされていた人形に
「基帆心」という名前をくれた
人物、それが、黒の協会長
月島翼基であった。
彼女は戦場と日常を分けて考えていた。
だからこそ、容赦がなく、
ゆえに、「鳥仮面の叶徒」ではなく、彼女自身の願いを見ていた。
真っ黒で灰色だった世界が
少しだけ色づいた…
だからこそ、
ゆえに、
なればこそ、
彼女は極東方面を侵攻する
かつて同胞であった叶徒達に
対する〈堕天使〉として
反逆するのだ。
反抗・反逆・裏切の翼は、
叶徒にとっては些末なことなのかもしれない…
なぜなら、彼らにとっては
芯夜境戒にとって、
既存の世界など、ゼロから創生(リセット)しなくてはならないほどに歪な世界なのだから…
だが、基帆心には、この世界で生きる意味を見つけた、生きる道が見つかった。
瓦礫とがらくたと屍の上にある
大地を消し去ってはいけないんだと…だからこそ、
元・芯夜境戒
月島基帆心は反撃の翼として
大地を疾駆し、崩壊への使徒を
撃滅する。
「黒掌ー激ー」
武装シスターは形もなくなるほどに木っ端微塵へと霧散し消える。
だが、周囲には同系統の、機械人形が、基帆心に襲いかかる。
だが、怖くない…、彼女には
信念がある…、誰かに用意された
道ではなく、自分の道たるものが
夢は絶望を引き起こす
希望は悲しみを引き起こす
ゆえに、混沌とした世の中には
何も考えぬことこそが
最善だとでもいうように
無慈悲なる教えに従っていた
だが、教えの背中には
空虚と虚無が蔓延していた…
ノイズ、混濁、混沌、崩壊
脳裏に宿る、鍵盤の破滅
黒きシルエットと
踊るカルテット
影人形、人形じみた砂時計
なれど、地表に宿りし、
ディストピアの中でも
燃え上がる魂が
戦う理由となる…
駆けろ、抗え、
掴むのは己自身の考え
誰かに用意された道ではなく
己が抱く信念のままに拳を振るう
Schwarz協会の外套を纏いて
基帆心と協会長の翼基は
終末じみた灰色の戦場を戦うのであった。
呪文
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