『女体化妄想リアルブート:図書館の魔女:宮代拓留』
超レアものだ……。 ついに僕の図書館に入荷か……。
ふふふ。僕はまた新たな情報を得て、賢くなってしまったようだ(感動)。
情報強者たる僕は、常に読書を欠かさない。
そう、読書により長年積み重ねられた知識は僕を魔女へと成長させた。
今や僕の存在そのものが大図書館と言っても過言ではないくらいだ。」
すまし顔で優雅に紅茶をすする図書館の魔女。
もちろん、飲んでいるのはレモン汁の代わりにマウンテンビューを2,3滴垂らした、魔女特製の紅茶(マウンテンビューティ)だった。
クールビューティのための知的飲料であるマウンテンビューティは、大量に入っているカフェインと糖分により、脳を活性化させる。
活性化させた脳に入れるのはもちろん、クールキャットプレスの、南方先生の金言だった。
宮代拓留「この間の『男を惑わす小悪魔魔女の恋愛テクニック』は実に素晴らしかった。
やっぱり、魔女たるもの、妖艶かつ小悪魔的でなくてはならない。
男をたぶらかして手玉に取るくらいじゃないと、名前負けするからね。あはは。」
いつか、この世の森羅万象全てを知る事を夢見て、少女は読書を続けるのであった。
自分が、幻想の図書館という牢獄の中に囚われている事に、気づきもしないで。
「タク! 目を醒まして!」
「拓留、このままじゃ、あなたは死んでしまうわ!」
「そもそも、何で女装してドヤ顔で小悪魔気取ってるんすかね? きんもー☆」
どこかから聞こえる声。 彼女に対して呼びかける、かけがえのない人たちの声。
悲痛な声。 泣き叫ぶような声。 それは、まるで世界が引き裂かれる断末魔のような声。
の後に、約一名の冷めた目での野暮なツッコミ。
彼女は、それらの声に全く気づきもしないで、また別の号のクールキャットプレスのページをめくり始めるのであった。
彼女はまだ気づかない。
図書館の本(クールキャットプレス)には、何一つ自分が今置かれた危機的状況から脱出する方法が、載っていない事に。
いや、そもそも自分が危機の中にある事すら、気が付いていない。
それどころか、自分の置かれた奇妙な状況に対して、疑問すら思い浮かべていない。
だから、脱走しようという発想すらないのだ。
そもそも、自分が何故女の子になって、図書館の魔女をやっているのか?
そもそも、自分をここに閉じ込めた相手が誰なのか?
世界の前提を疑わない彼女にとっては、図書館の本に書かれた文章だけが、彼女の世界の真実。
井の中の蛙大海を知らず。
そう、まずは、置かれた状況や前提条件に疑問を抱かない限りは、いくら本の知識で情報強者への道を極めたところで、妄想の図書館の中で、ずっと囚われのプリンセスを続ける事しかできないのである。
でも、彼女はとても幸せだった。
何も知らない、井の中の蛙は幸せだった。
図書館の中の情報強者の魔女は幸せだった。
だって、外の世界で、現実の世界で、どれだけ悲しい事が起きても、人が死んでも彼女には全く関係ないんだもの。
それに、わざわざ現実の事件の真実なんて知らなくても、どうでも良かった。
何故なら、ここにいる間、彼女の心は生まれて初めて感じるような、甘くとろけるような多幸感によって、ずっと満たされ続けていたのだから。
それは、彼女の元来の自己肯定感の低さ、そして中二病気質にも由来していた。
「図書館の魔女」は人ならざる存在にして、人類の上位種であり、読書家で、情報強者の極み。
彼女の自己肯定感や承認欲求は全て、自分が「図書館の魔女」であるとこの世界に定義されている時点で、全て叶えられていた。
そう、くだらない情弱のクラスの連中なんかとは、自分はレベルが違う人間。
洗面所で、自らの美しい姿が映るたびに、その恍惚の中で、自らの価値が証明される。
さらさらと柔らかで繊細なロングヘア、絹の様に透き通った美肌。
そして、自らの知的さを引き出してくれる、清楚で美しいドレス。
何よりも、眼鏡の奥に隠された怜悧な瞳。
彼女は、自らが求める物を全て手に入れて、完全に満たされていた。
だから、もう本当の真実を知る必要なんて彼女にはないのである。
こうして、本当の真実など何も知らないまま、少女は「図書館の魔女」として情報強者気取りを続けるのであった。
Library Skyエンド、完。
概要
2
尾上世莉架と来栖乃々と有村雛絵の3人が妄想の中に乱入したおかげで、正気に戻った宮代拓留。
途端に、「魔女になってから」今までの自分のおかしな言動が全て黒歴史化して、凄まじい羞恥心が襲い掛かって来る。
ぼ、ぼくは今まで、何をやっていたんだ~~~!?
有村「うっわ~w。 先輩って女装して鏡の前で恍惚しているような人なんですね~。きっしょ~w。ひくわ~w。」
拓留「追い打ちをかけるのはやめてくれ!」
来栖「最近はね、LGBTなど性の多様性も進んでて……だからおかしな事じゃないのよ!」
拓留「素面の僕の性癖はノーマルの男性ですからっ!」
世莉架(実は、私だけはタクの女装願望、ちっちゃい時からずっと知ってたんだけど、黙ってた方が良いかな?)
拓留「尾上も何、ニヤニヤしてんの? そういうのマジやめて!」
呪文
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