本日のランチ
「11月10日 秋の香り、衣に包まれて──秋野菜の天ぷら定食」
文・撮影:田嶋 達郎(グルメ記者)
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外はひんやりとした風。窓際の席に座ると、ほどなくして油のはぜる音が聞こえてきた。
この日の定食は、秋野菜の天ぷら定食。
運ばれてきた瞬間、衣の香ばしさとほのかな胡麻油の香りが鼻をくすぐる。
皿の上には、黄金色に揚がった旬の恵み。
海老の天ぷらは衣が薄く、噛むとぷりっと弾ける食感。
そして、かぼちゃの甘み、れんこんのシャキッとした歯ごたえ、ししとうのほろ苦さ。
どれもが主張しすぎず、しかし確かな存在感を放っている。
中でも秋なすのとろけるような柔らかさには、思わず唸った。天つゆにくぐらせれば、旨味がふわりと広がり、気づけば箸が止まらない。
添えられた味噌汁は、出汁の香りが立つあたたかな一杯。
ふっくら炊かれた白ごはんと交互にいただくと、油のコクが心地よく中和されていく。
天ぷらの傍らに置かれたレモンをひと絞りすれば、また違う顔を見せるのも楽しい。
季節を閉じ込めたような一皿──。
その繊細な味わいに、思わず時間を忘れてしまう。
秋の昼下がり、食卓の上で小さな芸術を味わった気がした。
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次回(11月11日)は、「豚の生姜焼き定食」。
香ばしさの先に、また新しい“昼の物語”が待っている。
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