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恋愛コメディ①『アキの幸せなウエディング』

使用したAI Stable Diffusion XL
『アキの幸せなウェディング』

プロローグ


ようやく、その日が来た。

アキは、純白のウェディングドレスを身に纏っていた。

頬を上気させ、少し照れたような笑みを浮かべている。

みんなが、そんなアキを見ていた。

日々家の人達もいる。

ヒトミはすでに泣いていた。

「ヒトミちゃんたら」

その姿を見て、アキは小さく笑う。

もちろん、新郎もいた。

愛する人は、アキを見るなり、

「綺麗だ」

と、言ってくれた。

その言葉に、アキはまた頬を染める。

(改めて言われると、恥ずかしいな)

そう思った。


「いろいろあったな。本当に」

思い返せば、ため息の一つも出てくる。

それは日々家だから、仕方ないのかもしれない。

それでも、

「本当に、なんでこんなにややっこしいことになったんだろう」

そう思わずにはいられなかった。


もう一度、周囲を見る。

見晴らしのよい高原に建てられたチャペル。

アキの好きな新緑の季節。

山と緑が好きなアキのために、彼が選んでくれた。

それも、嬉しかった。

広がる景色を見ながら、

アキは静かに思う。

(ようやく、ここまで来たんだ)

新緑と穏やかな風に、喜びも広がる。

今日という日を迎えられた。

それが、嬉しかった。

だから自然と笑みがこぼれる。

幸せだった。


『コレオ編』


あの日言われたプロポーズ。

それが、全ての始まりだった。



コレオは困っていた。

地元結婚式場のパンフレット撮影。

新婦モデルが決まらない。

マキには断られた。別の仕事を選んだからだ。

締切も近い。

そして今、コレオの頭の中には一人の女性しかいなかった。

室井明輝。

すでに気心の知れた派遣メイド。

ウェディングドレスが似合いそうな女性。

頼んでみよう。

ただ、それだけだった。



その日、アキはいつも通り仕事をしていた。

レーコはソファの端で紅茶を飲んでいた。ハチミツたっぷりの紅茶を。

そんな時、リビングの入り口からコレオが入ってきた。

いつもより早い帰宅。

(資料でも、取りに来たのでしょうか)

アキはそう思った。

しかし、コレオは、余裕のない表情をしていた。

コレオは、アキの姿を認めると、真っ直ぐにアキに向かって来た。

真剣な表情でもあり、思い詰めたようでもあった。

近づくと、アキの肩に手を掛けた。

いつものコレオならしない行動。

アキは戸惑った。

それでも、コレオは顔を少し上気させ、決心したように言った。

「アキちゃん、僕のためにウェディングドレスを着てくれ!」

突然の告白だった。

アキは戸惑った。

「………」

何も答えられなかった。

コレオは続けて言う。

「マキちゃんにダメって言われたんだ。何回も頼んだのに。真剣だったのに」

アキは再び、混乱した。

(なんで、マキちゃん?二股?)

そんなアキの気持ちに構わず、コレオは告白を続ける。

「だから、アキちゃん。

君しかいないんだ。

僕にはもう、アキちゃんしかいないんだ」

アキはフリーズしていた。

「もう、時間もない。

アキちゃんだけなんだ、こんなこと頼めるのは」

そして、アキにはこの言葉は聞こえていなかった。


『アキ編』


再起動した、アキ。

突然だったコレオからの告白。

派遣メイドをしていた時、何度かあったことだ。

冗談のように終わることもあれば、拗れてしまうこともあった。

だが、そんなことをコレオがするとは思っていなかった。

頬が少し熱かった。

「綺麗だ」と言われたわけでもない。

好きだと言われたわけでもない。

それなのに、なぜか落ち着かなかった。


アキはどうするか悩んでいた。

正直なところ、断る理由は思いつかなかった。

それどころか。

断った後の日々家を想像すると、少しだけ寂しかった。

日々家で、もっと働きたかった。


コレオのことも、少し頼りないと思う時もあったが、

仕事が出来ることも知っていた。

疲れてしまうことが多いだけで真面目な人。

時々頼りなくて、

時々放っておけなくて、

時々、驚くほど優しい人。

それがアキのコレオに対する評価だった。


歳が離れ過ぎているとも思ったが、

それを言うなら、派遣メイドと依頼主だって普通ではない。

そもそも日々家そのものが普通ではない。

今さらかもしれない。

そう思ってしまった自分に、

少しだけ苦笑した。


コレオがここまで真剣に告白したのだから、

アキもそれに真面目に答えたいと思った。

少なくとも、

笑って誤魔化していい話ではない。

それだけは分かった。


アキはコレオの目を見た。

コレオは思い詰めたような、恐れるような表情をしていた。

(ああ、コレオ様らしい)

アキは少しホッとした。

仕事の時もそうだ。

困った時もそうだ。

何かを決めた時もそうだ。

いつも不安そうな顔をする。

それなのに、

最後にはちゃんと前へ進んでしまう。

そんなところは、少しだけ格好いいと思っていた。

思った瞬間、

アキは慌ててその考えを追い払った。

(何を考えているんだろう、わたし)

少しだけ恥ずかしかった。


(やはり、変わらないんだな、コレオ様は)

コレオを見て、少し落ち着いたアキは先ほどのコレオの告白を思い出していた。

(そう、マキちゃん。

コレオ様はマキちゃんにも告白してるんだ)

だんだん疑問と、怒りのようなものが込み上げていた。

(わたしに、最初に告白したんじゃない。

マキちゃんが、最初)

そう考えると、

胸の奥が少しだけ重くなった。

自分でも理由はよく分からない。

ただ、面白くなかった。

アキの中で、込み上げるものは、まだ明確な形にはなっていなかった。


(マキちゃんは綺麗だし、明るいし、かわいいところもいっぱいあるわ)

スタイルだって良い。

人を惹きつける力もある。

アキ自身も、そんなマキに何度も助けられていた。

だから、好きになるのも分かる。

分かるのだけれど。

嫉妬、そう呼ぶものが形になっていたのかも知れない。

(でも、マキちゃんに振られたからって、

すぐわたしに告白するのは間違ってる)

チクリと胸が痛んだ。

悲しい。

そう思った自分に、

アキは少し驚いた。


アキにだって、女としてのプライドはある。

自分の見た目に自信がないわけではない。

長期契約を任される程度には信頼されていることも知っていた。

少なくとも、

誰かの代わりで良いとは思えなかった。

アキは尋ねることにした。

感情に任せない、アキらしい判断だった。

「コレオ様、あの、どうしてわたしなんですか。

マキちゃんのこと、諦めちゃうんですか」

「はぁ、何度も言ったんだよ。

日を改めてみたり、好きそうなものを渡してみたりしたんだ。

でも、マキちゃん、それだけはダメって言うんだ」

「それで、わたしですか」

思ったより冷たい声が出た。

アキ自身が一番驚いていた。

コレオはそれに気づかない。

「ほら、マキちゃんて自分を曲げないじゃない。

仕事を干されて悔しくても、周りに陰口言われても、誰かに媚びたりしなかった。

だからさ、マキちゃんが決めたことを曲げるのなんて、難しいって思ちゃったんだ」

アキはマキのこと考えていた。

いつも明るいマキ。

面白いことに、真剣に飛び込んで行くマキ。

自分が知らなかったマキの姿が、コレオの話にはあった。

(マキちゃん、やっぱり凄いな。

だからコレオ様が好きになっても仕方ないよね)

そう思った。

そう思ったのに。

胸の奥は、少しも軽くならなかった。

(でも、わたしと天秤に掛けるのは違うよ)

それだけは、どうしても譲れなかった。

(そう。わたしのこと。

わたしをコレオ様はどう思っているの。

長期契約のメイドだから?

信頼しているから?

それとも……)

そこから先を考えそうになって、

アキは慌てて思考を止めた。

アキは、マキのことを考えているうちに、心が落ち着いてきた。

いや、女のプライドが、アキらしく静かに燃え上がっていた。

アキは呼吸を整えた。

感情的になってはいけない。

メイドの矜持だった。

それでも、

どうしても聞かずにはいられなかった。

「コレオ様、それで、わたしなんですか。

マキちゃんの代り」

コレオは汗が出てきた。言葉が出てこない。

「いや、その、アキちゃんを代りだなんて、

アキちゃんはマキとは違うから……

そう、全然違うんだ」

アキは少しだけ息を止めた。

思っていた返事と違った。

「何が違うんですか」

圧が痛かった。コレオはカメになりたかった。

「ほら、ね、そう、

アキちゃんはマキと違ってどこかに飛んで行ったりしないじゃない。

信頼してるんだ。アキちゃんのこと。

だから、俺にはアキちゃんがいるって思ったら、

もう止めるこたが出来なかったんだ」

二度目の告白であった。少なくともアキにはそう聞こえた。

その瞬間、胸が大きく鳴った。

アキは戸惑った。

マキに振られた事実は変わらない。

それでも、アキにそれだけの想いを持っていることを知った。

「コレオ様、いいんですか、決めてしまったらもう代えることができないんですよ」

それは確認だった。

けれど、

少しだけ期待している自分に気付いてしまった。

だから、余計に怖かった。

アキはまだ、コレオとマキのことを考えていた。

室井明輝、優しい娘だ。

「確かにマキとは仕事でウマが合うよ。でも、それは仕事だからさ」

コレオは何も考えずに答えてしまった。

その言葉が、アキにどう聞こえるのか。

コレオは、まだ気付いていなかった。

「だから、いいんだ……」

コレオのカメセンサーが反応した。

「アキちゃんしかいなんだ」

コレオは言い直した。

「アキちゃんの見た目だけじゃない。アキちゃんのいつもを見ていたんだ」

アキはこれを見返した。

褒められることには慣れている。

だが、

そんなふうに見られていたとは思わなかった。

コレオは更に続けた。

「アキちゃんの佇まい。メイドとして仕事ぶり、僕には変えの効かない人だとわかったんだ」

マキのことはどうした。カメが呟いていた。

「そんなにですか。マキちゃんよりわたしがいいんですか」

言ってから、

少しずるい質問だったかもしれないと思った。

だが、それを無かったことには出来なかった。

アキの女のプライド、最後の抵抗であった。

「も、もちろん」

コレオはアキの言葉に違和感を感じたが、

まだ、カメセンサーが危険を知らせている。

押すことにした。

「アキちゃんなら、約束を破らないって信じてるから」

その言葉に、アキは反応した。

「マキちゃん、何かコレオ様との約束を破ったんですか」

「そうなんだ。最初はいいって言ってくれてたんだ。

なのに、また、あの人面白そうって言って、僕のこと捨てたんだ」

アキは驚いた。マキが面白そうで、結婚の約束を裏切ったことを。

アキはコレオの顔を見た。どこか情けなさそうな顔をしていた。

だが、カメは「いつものことだろ!」と突っ込んでいた。


アキはコレオのためにこれだけは伝えようと言葉にした。

「わたしはコレオ様のこと、裏切ったりしません。約束します」

アキは真っ直ぐにコレオを見た。

伝えた気持ちに嘘はなかった。

迷いはほとんど消えていた。


コレオは、アキからOKの返事をもらえたと思った。

嬉しかった。だから、カメのささやきを無視してしまった。

「アキちゃん、ありがとう!

アキちゃんが、女神に見える。

ずっと、うちにいてくれ。もう、離さないから」

大袈裟である。まだ、アキはOKしていないのに。

しかし、

アキの頭も心も、

もう追いついていなかった。


そんな時、日々家リビングの扉が開いた。


『麗華編』


リビングの扉を開けて、入ってきたのは、

向井麗華。

ヒビ・スタジオの運営代理をしている。

今回のコレオの行動は、麗華も把握していた。

麗華はコレオのことを心配してやって来た。

もちろん、上手くいかなくて、仕事に影響することを心配してだ。

麗華は、冷静にコレオとアキを見た。

コレオはオロオロしていた。

これはいつものことだ。

だが、いつもとは違い、少しだけ上気し顔をしていた。

アキは、女の顔をしていた。

麗華は、おや、と思った。

普段のアキならしない顔だ。

麗華には何かあったと分かったが、

まず、大事なのはアキの意思だと思い、

コレオに尋ねた。

「それで、代表、上手くいきましたか」

コレオは、安堵した顔で、

「あ、麗華さん。

うん、大丈夫。約束してくれた」

「そうなんですか」

麗華も安堵した。

アキはまだ、追いつかない頭で、それでも、麗華を見た。

「あの、麗華さんは知ってたんですか」

アキは戸惑った顔をしていた。

突然の話だ。

戸惑うのはわかる。

しかし、麗華も、アキに受けてもらいたかった。

コレオは人より打たれ弱いところがある。

マキに次いで、アキにまで断られれば、

仕事にも影響するかもしれない。

身近な者から拒絶される辛さは、

麗華自身、よく知っていた。

そこで、麗華はコレオの後押しをすることにした。

「アキさん、代表からは聞いていました。

わたしも、あなたしかいないと、思っていましたから、

受けいれて頂けたならよかったです」

「麗華さんも、賛成だったんですか」

「それは、もちろん。

アキさんも、年齢的に結婚やウェディングドレスに興味を持っていても、おかしくないと思っていましたので。

それに、似合うと思いますよ。

アキさんのウェディングドレス」

アキは、戸惑った。

まだ、正式に承諾していないのに、ウェディングドレスにまで、話が飛躍してしまっていることに。

だが、麗華が知っていたこと、そして、賛成してくれていることに安堵して、

深く考えることはしなかった。

「それでは、わたしでいいんですね」

アキは確認した。

周囲に気を配る、アキらしい考えだった。

麗華はことさら優しく答えた。

「アキさんでいいのではなく、

アキさんがいいんです。

代表も、よく知るアキさんだからこそ、この話をしました。

わたしも、アキさんならと思っていました。

突然のことで、戸惑ったかも知れません。

それでも、代表も誠意を尽くしてお願いしたのだと思います。

代表ですから、うまく伝わらないこともあったのかも知れません。

ですが、わたしの聞いた限り、本当にあなたに希望をもっていました。

本当に。

放っておいたら、壊れていたかも知れませんよ。ふふ」

麗華の最後の言葉で、アキの胸に狂おしいものが走った。

麗華さんも同じことを言うんだ。

だったら、コレオ様の言葉は嘘じゃなかったんだ。

アキは、コレオの思いが、真実であると知った。

麗華に知らされてしまった。

「嘘ではなかったんですね。

でも、マキちゃんのことは……」

アキは麗華に聞くことではないと、途中で話すのをやめた。

しかし、麗華は顔色を曇らせた。

怒っているようにも見えた。

「それです!今回の発端は。

突然、マキさんが、あんなことを言い出すなんて、わたしも驚きました。

でも、勘違いしないでくださいね。

その件がなくても、代表はあなたのことを考えていました。

アキちゃんなら、こっちのウェディングドレスの方が似合うかな。

そんなことをわたしの前でも言っていたんですから」

それを聞いて、アキは驚いた。

だって、その時は婚約者のマキちゃんがいたはず。

やっぱり、二股?

いいえ、コレオ様は知っていたのかも知れない。すでにマキちゃんにほかの男がいたことを。

だから、わたしに?

でも、コレオ様ったら、家ではマキちゃんより、わたしによく話しかけていたわ。

コレオ様のことだから、マキちゃんから言い寄られて、断れなかったのかも知れない。

それで、コレオ様も、その気になったところを捨てられた。

そうかも。

いえ、気の弱いところのあるコレオ様だもん、それが本当のところ、

そうかな?

いえ、そうに違いないわ。

麗華さんも言ってたじゃない。

婚約者がいても、ウェディングドレスを見て、わたしに似合うって、考えてたって。

きっと、そう。

本当はわたしのことが……

でも、マキちゃんに言い寄られて、言えなくなったんだ。

だから、マキちゃんがいなくなった今になって、言い出した。

そう、それなら、分かるわ。

コレオ様たら、こんな大事なことでも、流されるなんて、本当にダメな人。

でも、これからは、わたしが支えられる。

間違った方に行かないように、わたしがちゃんと支えてあげなくちゃ。

「麗華さん、わかりました。

麗華さんの話を聞いて、わかりました。

コレオ様が、本当に流されやすくて、ダメなところがあること。

でも、わたしがなんとかします。

わたしが、支えていきます。

だから、麗華さんも安心してください」

麗華は、アキの言うことがわからなかった。

しかし、アキが決断したことに安堵して、そこには触れないことにした。

どうも、仕事ではなく、日々家側の問題であるように思えたからだ。

「そう。よかったわ。決めてくれて。

代表も、よろこぶと思うわ。

なら、早速、ウェディングドレス決めちゃいましょう」

「え、そこからですか」

「ええ。こう言うのは、早い方がいいの。

後から、慌てたくないでしょ。

それに、代表がアキさんに似合いそうって言っていたウェディングドレス、

そのカタログもあるのよ。

見たいでしょ」

アキは、それを聞いて、素直に頷いてしまった。

「なら、座りましょう。

楽しみね。ウェディングドレス」

アキは、麗華に促されるまま、麗華の隣に座った。

そして、コレオは置いてけぼりにされてしまった。

カメレーダーも、落ち着いていた。

コレオも安堵して、アキの向かいのソファに腰を下ろした。

そのソファの端には、一人静かに、チョコチップクッキーを食べているレーコがいた。

呪文

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