『ロボカノReー道実登博式、主陣を診るー』【ニャンノ世界】
量産型ロボカノからネームドロボカノになったということだ。
道実登は、この件に関して、主陣博士には感謝しているし、対する主陣博士も、ヤミの気質はあるものの、量産型ロボカノではない個性を主張するために行った、破壊行為なのだとしたら、それはそれで
強い生命力と意思を感じたため、受け入れた。
現在、道実登は何をしているのかというと
主陣の健康状態をチェックしていた。
加えて実験も…、主陣に対する実験、
それは人体実験なのだが…
主陣博士は自分自身が実験されるのを
むしろ、喜んでいた。
「さて、はじめるわね、博士…」
「道実登さんお願いします」
今回、彼の中に眠るヤミを観察および
抽出することにあった。
ヤミとは、人間に眠る深淵であり、
人間にはヒカリとヤミが交錯しているのだそうだ…
そもそも、
ヒカリだけでは…ヤミだけでは…
人間ではなく、
人類が誕生するまでに
ももほうくんとくろほうくんなどの
細胞における物語があるのだが…
今回は、ヤミの部分に絞って
物語を深めていこう。
くろほうくん、これは侍冬地戦を舞台に、存在が明らかになった細胞で、
黒色生体細胞という…元は桃色生体細胞だったのだが、桃源郷に抱く反抗の思いが、ヤミなる思いがくろほうくんを形作った。
戦争なくして進化なし
争いなくして進化なし
進化とは平和の中にあらず
混沌のなかで構築されるもの
だからこそ、争いの中で進化していく
という人類の中に構築されたのも
黒色生体細胞があったからこそ
なのである。
「これをAIに翻訳してもらえれば、というのを言われそうだな」
だが、主陣博士はこう呟きながらも
「だが、人類たるものは、人類の個性はこう長々というのもいいじゃないか」
とも思うわけで、
とかく彼の場合の、物語というのは
長々と書いて、頭の中の世界観を広げていくのだ。
それは見せつけるためではなく、
思ったことをその中に埋め込むといった
イメージに近い、
頭のなかで抱いたイメージを
構築したものに埋め込む
人類は完璧さを求めて
AIを使用することもあるのだが
彼の場合は、
主陣の場合は、
できる限り、文章
構築する文章は我流でいきたかった。
我流でなければ満足しない博士
それが主陣博士であり、
こだわりも強いため
その事がかえって、
偏屈さを呼び、
ヤミを加速させる原因にもなるのだが、
この点に関しては後に起こる騒動からも理解できるだろう。
コーヒーを飲み干し、道実登は彼の体を触診する。
「ドキドキしてるね…」
唇の下にあるホクロがセクシーだ…
我ながら、なんという…ゴホンと
なって赤面する。
「すまん、見とれてしまって…」
「いいわよ、貴方をドキドキさせることがロボカノでもあるのだから…」
そうだ…これは貴方だけのロボカノだから、誰のものでもない、ワタシのモノガタリなのだからと主陣は言い聞かせ、実験に付き合う。
「それじゃあ注射するね」
「それはなんだ…道実登さん」
「あぁ、これは…」
道実登は口をすぼめた
「桃色生体細胞を投与するのよ」
「なっなんで!?」
主陣博士は狼狽する…
ももほうくんはヒカリの存在で
主陣博士はどちらかというとヤミの存在だから…
「僕を陽キャラにするきなのかい無理だよ…」
「反応が見たいだけなの…ね、お願い…」
「ダメと言ったら…」
「ダメって言ったら…かぁ」
真っ白な天井を見て、少しばかり、考える道実登…、天井は空虚さに満ちていて、それがかえって、虚しさを生んでいた。
「ある種、それは悲しみではないか…」
主陣が呟いた…
「悲しみの中に温かさあるってことだよ…」
言葉では埋め尽くせない、難解な音楽を弾いている気分を彼は、主陣は感じた。
なぜ、彼はここにいるのか…なぜ、それはここに在るのだろうかと考えつつ…
彼女は…実道登は…主陣を見つめている。
ある種の自分勝手…情報世界の、少しばかりの歪みのなかで恍惚に揺れる炎を見ながら、彼は彼女の提案を受け入れた。
「コーヒーの匂いってヤミの味がするよね」
口づけ…少しばかり、時間が静止する…
ある種のカルマ、囚われの天秤に魂を拘束される…主陣の意識が揺らぎ…、自身が別の何かへと変わっていくのを覚える。
「グガガガガガ…」
ニンゲンデハナクナッタ…
アイノソウシツ、カナシミノカソク…
「主陣くん…」
ノロイ博士より万が一の為にと渡された特殊鎮圧銃を撃つ、道実登!
撃たれた主陣はバケモノの姿からニンゲンへと戻る。
目を覚ます…見知った天井…
自身は生きていた…なれど、構築するには
難しく構築させるには数多の情報が必要だった。ここに歴史を述べよという言葉が聞こえてくる。繰り返す雑踏、悩みの中の不協和音…自分ごときがというネガティブな感情が主陣を苦しめる。
なんのためにいるのだろう…なんのために…なんのために…、行動には理由がないといけなかった…大義がないと…それが彼を追い詰めることになって、無理をさせていた。
「主陣くん起きたのね」
髪の色が変化していた。
「道実登さん…すいません…自分、病んでました」
「いいのよ…、それにアナタのナヤミは深淵レベルに深刻だってわかって…安心したわ」
「というと…」
「無理にキャラ変しなくていいのよ…アナタはアナタのままでいい…そう言いたいだけよ」
どこか、押し付けがましくも、その不器用ながら紡がれた言葉が、主陣にとって、心を温めるのに十分なほど浸透させたことは…いうまでもなかった。
「ありがとうございます…道実登さん」
主陣は博士なれど、道実登には頭が上がらなかった…これがおねえさんというものなのかと…感じながら、今日もニャンノ世界は進んでいく。
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