【新生活】メイドさん・オリジン
でも、最近世情が不穏なのもちょっとだけ気になる……なんか過激派が活動してるって噂もあるけど、うちの会社には関係ないよね?
あれ? エントランスに鞄が落ちてる……?
誰かの忘れ物かなぁ? 受付に届け――
――それから先は覚えていない。
真っ白い暗闇の中に私の意識は落ちていった……
目が覚めると、見知らぬ天井があった。
近くにはお医者さんらしき人と、看護士らしき人の姿。私の意識が戻ったことを確認すると、お医者さんはこう続けた――
「目が覚めましたか? 落ち着いて聞いてください……
焦ることはありません。あなたにお話があります、いいですか?
どうか落ち着いて……貴方は爆弾テロに巻き込まれ、ずっと昏睡状態だった。
ええ、ええ、わかってます……どれくらいの長さか?
まさか9年も昏睡していたなどとは言いません。あなたが眠っていたのは数か月程度です。
ですが……あまりにも傷がひどく、当初は回復の見込みがありませんでした……
しかし、貴方の勤めていた企業の申し出により、特別な治療を施すことで意識を回復させるまでに至りました。
そう、最先端のバイオテクノロジーとサイバネティクスです。そのため、貴方の身体の……脳や一部の臓器を除いたおおよそ90%は……人工物となりました。
……大丈夫! 落ち着いて! 落ち着いて!
そう……大丈夫です、大丈夫です……
それと……貴方の勤めていた会社もこの事件で色々と態勢の変化があり、CEOが変わっています……表向きは変わっていない扱いですがね。
今回の手術についても、彼女が協力してくれたから成功したと言えるでしょう。
また、彼女は今後のサポートとデータ収集を兼ねて、貴方を秘書として迎え入れたいと申し出ています。
この申し出を受けるかどうかは……貴方次第です」
こうして、私はこの不思議の少女の秘書……もといメイドとして迎えられることになりました。
今思い返せば、とんでもない新生活の幕開けだったと、そう思うのです。
呪文
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