朝が来ても
♢
「おはようございます」
アルトリアはすでに目を覚ましていた。その声は少し掠れていて、だけどとても優しくて、まるで夢の続きみたいで──。
「……あ、うん……おは……よう……」
言葉がまだ眠気に絡まって、うまく出てこない。わたしは彼女の胸にすり寄るようにして、もっかい目を閉じる。柔らかな布団のなかで、彼女の腕の中にいる安心感が、全身をとろけさせていく。
「もう少し……このままでも、いいですか?」
「うん……むしろ、動けない……」
「ふふ、そう思って……ぎゅっとしていましたから」
くすぐったそうに笑うアルトリアの声が、耳元で震えた。細い指がわたしの髪をそっと梳くたびに、まるで子どもになったみたいな気分になる。
「……あのね、アルトリア……今日、仕事……なんだけど……」
「ええ、そうですね」
「準備しなきゃ……だけど……」
「……でも、まだ行かせませんよ?」
その一言に、わたしの頭のなかで何かが止まった。
「……え?」
「貴女が、まだ私の腕の中でふにゃふにゃしているのに。手放すなんてできません。ですから、もう少し……この時間を、独占させてください」
呪文
入力なし