玉響チトセの起死回生
悪神の眷属が襲来し、セントレイク内に閉じ込められた形となったヒノイ視察団。
その一員として参加していた玉響チトセは、金髪を揺らしながら戦場を疾走をしていた。
上空からチトセが操縦する諜報兵器『秋茜』で撮影した戦闘光景をリアルタイムでヒノイまで共有、国境を越え解析班が弾き出した攻略法をセントレイクの冒険者、騎士団たちへとフィードバックする。
敵の種類によって当てる人員を変える。日頃魔物という特殊な生物を相手取るセントレイクの者にとって当たり前の動きだ。
効率の上がったセントレイク軍は勢いを増し、押し寄せる眷属共を押し返す。
「洗練されてますわね。ヒノイも見習うべきところかしら」
チトセは高台から全体を見渡しながら、戦況を観察する。
と、ここで大群から大きく外れた1匹と騎士が対峙する。
「ちょっと黒髪の貴女!そいつとのマッチングは非効率ですわ、とっととお下がりなさい!」
「ダメだ!まだ後ろの家に逃げ遅れた者がいる!」
チトセは舌打ちする。この世界線でもこの騎士は融通が利かない。この後手酷く返り討ちに遭い反撃の勢いが削がれた要因だ。
チトセや仕方なく騎士の方へ駆け出す。
「いいですこと!? そいつは炎を吐きますわ、貴女は炎属性でしょう!? ですから…」
「奴以上の炎を出せば良い! そういうことだな?!」
「話聞けですわーー!!?」
制止の声は届かず、騎士の放った業火の炎は眷属を包みこみ…、更に膨れ上がった。
「なんだ!? 制御が離れて…」
あの眷属は炎を浴びるとそれを吸収し、己の熱量を上乗せして返してくる。
これまで全て反撃を受けてその余波が周りに広く及んだのだ。
今回も例に漏れず返してくるようだ。包んでいた炎が凝集され、極大の火球へと変わる。
「足元!狙えですわーー!!」
その熱量に圧倒されていた騎士に、チトセの怒声が届く。
反射的に、騎士は爆撃魔法を眷属の足元に打ち込んだ。
今まさに撃ち放とうとした眷属は大きくバランスを崩し、火球はその足元に着弾した。
爆発の余波で二人は遠く飛ばされた。
爆発が収まり、起き上がった騎士がいまだ倒れ込むチトセを抱き起こす。
「おい、しっかりしろ!」
「お前がしっかりしろですわー!」
チトセは騎士をぺちりとぶん殴る。騎士には全然効いていなった。ちなみにチトセは凄く痛い。
「人の話を聞けと教わらなかったんですの!? あいつに炎は御法度ですのよ!!」
「わかった、すまなかった。御蔭で助かった」
「まだ助かってませんわよ!」
チトセが指差した先には、起き上がった眷属が五体満足にしていた。
本当に炎は効かないようだ。騎士はチトセを庇うように眷属と対峙する。
「倒し方は分かりましたわね?」
「足元を崩して、斬る」
「よろしい。それだけ覚えておきなさい」
チトセは騎士の背に手を置き、異能を起動する。
「何を…?」
「貴女が炎をぶっ放す前に戻れたら、良いと思いませんこと?ちなみにわたくしは大層思っておりますの」
「それは勿論そうだが…」
「では交渉成立ですわ、きちんとやりなさい」
チトセの異能『時間遡行』。今日を既に何度も繰り返していたが、今回は二人一片に戻ることにする。
「わたくしばかり疲れますの。貴女がきちんとなさい」
「…よく分からないが、わかった」
秘匿している異能、しかし完全勝利には背に腹は代えられぬ。
特に今回この騎士をここまで助けたのに無かったことにされるのは非常に癪であった。
チトセは融通の利かない同行者と共に、世界線を書き換えに戻ることにした。
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