氷が溶けるまで
https://suno.com/song/9c25353e-211b-43d7-abd2-9473c2b1a5b0?sh=Mx31zdtRVi8gLgVd
ここ最近の私は、仕事も家庭も全てがうまく行かず、毎日にうんざりしていた。
仕事を終えても真っ直ぐ家へ帰る気にはなれず、路地裏の滲むネオンの先にあった小さなバーへ、吸い込まれる様に足を踏み入れた。
カウンターには女性のバーテンダーが一人。
ショートの髪にメガネをかけ、白いシャツの袖を軽くまくっている。
飾らない、けれど凛とした雰囲気だった。
「いらっしゃいませ。」
透き通ったやさしい声。
私はカウンターに座ると店内を見回し「へぇ、アイリッシュもあるんだ、ロックで貰えるかな。」と彼女に告げた。
グラスに薄い琥珀色の液体が注がれ、大きな氷がカランと音を立てる。
私がグラスを傾けると、甘みと共に仄かな苦みが舌に広がった。
「だいぶ、お疲れの様ですね。」
彼女は静かに尋ねてきた。
私はさして驚きもせず、苦笑いでうなずいた。
「毎日、何してるんだろうなって。
どんなに頑張ってもうまく行かず。
もう、何をすれば良いのか分からなくて⋯」
吐き出すように言うと、彼女はふと微笑んだ。
「それは、辛いですね。」
「でも、焦ってはいけません、氷だって溶けるまで時間がかかるものです。」
私はグラスを見下ろした。
透明な氷が、少しだけ小さくなっている。
「すぐに形を変えるわけじゃない。
少しずつ、少しずつ、時間をかけて変わっていくんです。その結果周りも変わっていく。
人間も同じ、そんなものなんですよ。
なんて、父の受け売りなんですけどね。」
彼女の言葉は、とても暖かかった。
まるで私の氷をやさしく溶かしてくれるかのように。
カウンターの向こうで彼女が小さく微笑むのを横目に、ただ静かに氷が溶ける音に耳を澄ませる。
その音と共に、少しずつ日々の疲れが消えていく様な気がした。
呪文
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