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代々、白い妖狐を従える、由緒正しき陰陽術師の家系、「白尾(しらお)」。
その当代の愛娘である白純(しらすみ)は、一族きっての「神狐信奉者」であった。

「ああ、神狐様、私めのような一介の賤しき人間にまでお声をかけてくださるなんて……無上の喜びですわ」

あの神託があった日から、その狂信的な姿にはますます拍車がかかっていた。

白尾家には、その家系の「始まりの物語」が言い伝わっていた。
ある日、祖先の男が山菜を採りに山に入った時の事、道端に倒れていた狐を見つけたという。
その狐はあちこちに怪我をしていた上、痩せこけて今にも息を止めてしまいそうな程弱っていた。
男はそれを哀れに思い、自らが採取した薬草を惜しげもなく使って手当てをし、十分な量の山菜を置いて立ち去ったという。
しかしその帰り道、男は恐ろしい熊の姿をした妖獣に出くわしてしまった。
最早これまでと覚悟をしたその時、草むらから一匹の狐が飛び出してきた。
それは紛れもなく、男が助けた狐であり、その狐は目の前で光を纏うと、美しい白狐へと姿を変え、熊を追い払ったのだ。
それ以来、その血筋には必ず白狐が現れ、付き従うようになったのだという。

幼き日、その口伝を聞いた白純は、その豊かな想像力で「助けてくださったのは神狐様の思し召しに違いない」と解釈し、それ以来、自分がいるのは神狐様のおかげだと崇拝するようになった。
同じ神狐を信じる者の間でも、その心酔するさまはやや常軌を逸していると感じられるほどであったが、窘めることもできず、今こうして彼女はある種の狂信者のように育ったのである。

「神狐様、漸く私に恩返しをする機会をお与えくだすったのですね。 不肖この白純、精一杯努めさせていただきます故、どうか見守っていてくださいませ……」

天を仰ぎながらそう口にする彼女の目には一体何が映っているのか。
それは彼女に付き従う白狐にも分からぬものであった。

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