だから・・・コイツら強いんだって。
騎士団団長とその補佐として付き添った者の2人が、森へ調査に向かい連絡が途絶えた。
その日の夕方には戻る筈だったのだが、2人は帰ってこなかった。
日が昇り辺りが明るくなり始めた頃、森へ向かう1人の姿が。
騎士団長の付き添いとして共に調査に向かった団員の双子の妹。
騎士団の姉とは違い王宮魔術師として配属されていた。
彼女の一族は代々魔術師の家系。
姉は魔力が開花する事はなく、魔法を使うことを諦め必死に努力して実力で騎士団に配属された。
「あれ程、2人には基本の魔術位は使えるようにして下さいと言っていたのにっ!」
まだ、2人が何者かにやられたと決まったわけではないけど。
騎士団だって今時、簡単な魔術位なら使えるものだ。団長はそんなの私には必要ない。そんな暇があったら剣を振るよ。と言って笑っていたし、姉は団長を心から尊敬していたから団長がやらないなら私も・・・と言っていた。尊敬?とはちょっと違う感情も入っていたかもだけど。
まぁ、怪我して動けない可能性もあるから私が来たんだけど。
あの2人がこの辺に出没するモンスターにやられるとも思えないし。
「出てきたね。さっきから気配は感じてたけど。ゴブリンかっ!数は30?いや、まだ隠れてる。50以上か!」
ここまでの数のゴブリンと一度に出くわすなんて初めての事だ!
コイツらゴブリンを導いている奴が居るのか?
口の中で力ある言葉の詠唱を始める。
両手の間でうねる炎の塊を前方のゴブリンの集団に放つ。
数体のゴブリンを焼き尽くすと同時に炎の壁ができる。よし、この壁を背に目の前の敵とだけ対峙するなら何匹居ようが数は関係ない。
再び詠唱を始める。
今度は風の魔法で前方から向かってくる敵を切り・・・チクっ・・さいてやるっ!
ん?肩のあたりに手をやると何か触れるものがあった。なにか・・・刺さってる?トゲのような・・
術の詠唱は終わっている。いつでも発動できる。
目の前の敵を警戒しつつ、体に刺さっているものを
そっと引き抜く。
細く尖った木?森を抜けてきた時に刺さった?そんな体に刺さるほど強く木に当たった覚えはないけど。
いや、もっと硬い。何かの歯だろうか?研いだ形跡と黒く焦げた跡が、、、ある!
ゾッとした。
目を上げると炎の壁の向こうにこちらをじっと見つめるゴブリンが1匹。
手には・・・・長い棒状のものを持った・・吹き矢
慌てて前方の迫り来るゴブリンに向かい風の術を開放するものの。
視界の歪みに襲われた風の刃は明後日の方向へ飛んでいく。
こんな・・ゴブリンなんかに・・
呪文
入力なし