#13 死後チートライフ

2025/05/03

使用したAI Stable Diffusion XL

《死後チートライフ》第13話：最後の夢
「ハンナ……？」
その名前を口にした瞬間、リオの動きが止まった。
ハンナ？誰だ、それは？
まるで頭を強く殴られたように、ぼんやりとした記憶の断片が一気に押し寄せてくる。
中世風の城の庭園、血の海に倒れた少女──
豪邸のバルコニーでワイングラスを掲げ、微笑む少女──
そして、日本の神社、朱色の鳥居の下。巫女装束に身を包んだハンナが、真剣な表情で彼に言った。
「──中継所を通った魂は、最終的に自分が誰だったかを忘れてしまうのよ」
記憶の奔流が堤防を越え、リオの頭を突き破った。
激しい頭痛が襲い、同時に仙界の夢がひび割れ始める。舞台装置のような世界がきしみながら崩壊していく。
「ハンナって誰だ……それより、俺は……一体……？」
リオは頭を抱え、地面にしゃがみ込んだ。思考はぐちゃぐちゃに絡まり、言葉さえもまとまらない。
──その頃、魂の中継所。
真っ白な部屋の中。
ソフィアはベッドの端に腰掛け、リオの眉間に指先をそっと触れながら、かすかに微笑んでいた。
すべては計画通り。
彼女の手によって、洗脳はすでに始まっていたのだ。
夢というのは、魂が自分自身を見失うための装置。
何百年、何千年と、偽りの世界で過ごすうちに──魂は、かつての自分を忘れてしまう。
ハンナの存在？
ソフィアは肩をすくめ、小さく首を傾ける。
あれはただのイレギュラー。
本来、魂同士が接触してはならない決まりだったが、リオはすでに夢の迷宮に深く囚われている。
もはや、ハンナなど影響しない。
仙人、ヒーローチームのリーダー、過去へ戻る転生者──
どんな役割を演じようと、夢が崩れれば次の夢がすぐに始まる。
そして最近の夢には、もはやハンナの影もなかった。
「そろそろ最後のステージに送りましょうか……」
ソフィアはくすりと笑い、リオを「最終夢」へと導いた。
──
リオが目を開けると、そこは真っ白な雲の上。
「楽園」とも呼ぶべき場所には、無邪気な子どもたちが虹色の滑り台に並んでいた。
「ようこそ、エンジェルランドへ！」
白いワンピースに天使の輪を載せた女性が、穏やかに歩み寄ってくる。
「坊や、どのパパとママを選びたいかな？」
少女の優しい声に、ほんの少しだけ、いたずらっぽい笑みが混じっていた。
「……親を選ぶって？」
リオは眉をひそめ、違和感を覚える。
「そう、ここは転生の準備所なの。私は案内役の“エンジェルお姉さん”ソフィアよ」
茶色の髪がふわりと揺れる。ソフィアはにこやかに続けた。
「好きな家族を選んで、滑り台をすべっていけば、可愛い赤ちゃんになれるわよ♪」
リオは顎に手を当て、じっと考え込もうとした──その時。
突然、空の彼方にそびえるカラフルな「キャンディ山」が現れた。
雲の上に浮かぶ山は、色とりどりの飴玉でできており、甘い香りを放っている。
「キャンディ山……！」
リオの目が輝き、思わず走り出す。
だが、その手が届く前に、世界がぐるりと反転した。
夢は、音もなく崩壊した──。

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