HA爆弾《ヘイル・メアリー》

2023/10/01

使用したAI その他

対ヒノイ戦において、フェンテスは明らかに劣勢だった。
技術的にははるかに先行しているものの、異能を生かしたトリッキーな攻撃に翻弄されていた。
数は少ないが威力の強い武器は存在したが、数の暴力の前には対抗出来なかった。
だが、フェンテスは歴史を紐解き、技術の優位を「少なくとも膠着状態に変換する」方法を思いついた。

HAドライブは原理上、注ぎ込む水の量を増やすことでいくらでも出力を上げられる。
これを瞬間的に狭い空間で連鎖的に行った場合、動力源ではなく爆発物として機能する。これがHA爆弾の原理だ。
しかし、通常のHAドライブよりはるかに重くなり、戦術レベルでは実用的武器ではなかった。
とはいえ、幾らでも大出力にできるという特性は、「はったり」として使うにはこれ以上ないほど好都合な爆弾ではある。
何より、HAドライブの原理はフェンテスしか知らない。はったりで冷戦状態に持ち込める可能性があった。
というより、現時点で膠着状態に持ち込む手段がこれしかなかった、とも言えた。

作戦決行の朝、次のメッセージが各領域に送られた。
事前に相談を受けた同盟国のセントレイクは、ため息と共に作戦を了承した。他に選択肢がないからだ。

フェンテス国家主席代行のメッセージ：
「我々は戦争を求めているわけではありません。しかし、この世界では力がすべてです。
不穏な一部の勢力が我々を脅かし、世界全体を危機に陥れようとしています。
我々は生き残るため、大規模破壊兵器を持っていることを明確に示さなければなりません。
無論、我々は今後も冷静に他の国々と交渉し、平和的な解決策を模索するつもりです。
しかし、もしこれ以上戦いを挑まれた場合、我々は山脈すら吹き飛ばす武器を使用し、我々と我々の同盟国守る用意があります。
これは最後の手段であり、我々はそれを望んでいるわけではありません。
しかし、生き残り、国を守るためには、時には厳しい決断をしなければならないことを理解してください。
どうか、もう一度立ち止まり何が最善か、考えて下さい」

無論、このメッセージにまともな応答はなかった。
半ばあきらめの中、フェンテスは史上最大規模のHA爆弾を4か国の中央、不毛な山脈の中心で起爆した。
この爆発で、山脈の中心部は完全にクレーターとして陥没した。
爆発によるきのこ雲は、はるか遠くのヒノイやシラクレナの中枢からも目撃できた。

この爆発が世界にどのような影響を及ぼすのか、まだ誰も知らない。

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