霧島瑞穂 Ep.Ⅱ『祭夜の契』Scene 3
もし、今夜彼女を祭りに誘っていなければ、まだ引き返せたのかもしれない。神に仕えし巫女と、その身を穢そうとする罪人。その間に横たわる障害の大きさを、私は幾度となく恐れてきた。しかし、もう、そんなことはどうでもよくなっていた。この背徳の甘美さに、私の心は、まるで蜜のようにとろけていく。
彼女の瞳の奥に宿る、神罰をも恐れぬ覚悟に、私は初めて心から寄り添うことができた。そして、この瞬間、私は悟ったのだ。私を深淵へと誘う彼女を愛することは、もはや抗いがたい運命であると。神への冒涜も、世俗からの断罪も、二人で背負う罪ならば、それは罰ではなく、この上ない悦びなのだと。
呪文
入力なし