本日のランチ
『食彩探訪』11月号特集
「11月20日 香りが誘う黄金の一杯──焼き豚チャーハンセット」
文・撮影:田嶋 達郎(グルメ記者)
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店の引き戸を開けた瞬間、鼻先をくすぐったのは、中華鍋の底で跳ねる油と醤油の香ばしい匂い。
今日の日替わりは、その香りだけで“当たり”を確信させる焼き豚チャーハンセットだ。
まず目を奪うのは、ふわりと盛られたチャーハン。
米ひと粒ひと粒が油をまとうように輝き、焼き豚の甘い香りとともに湯気が立ち上る。
スプーンを入れれば、しっとりとパラりの中間にある理想的な食感。
醤油の香ばしさに、焼き豚の旨み、卵のやわらかな甘みが混じり合い、
噛むたびに“うまい”が小さく積み重なっていく。
セットのワンタンスープは、優しい塩味の中に、つるりとしたワンタンが泳ぐ。
チャーハンのコクを包み込み、ひと息つくような穏やかさがうれしい。
わかめサラダ(中華ドレッシング)は、口の中をリセットする爽やかさ。
ごま油の香りと酢の軽やかな酸味が、チャーハンの余韻をすっと整えてくれる。
さらに小鉢のおひたし、彩りの良い漬物が添えられ、
一つのランチセットとしての完成度を静かに底上げしている。
派手ではない。
けれど、鍋を振る音から始まる“作る人の熱”が伝わってくる一杯だった。
食べ終わる頃、どこか心まで軽くなっているのがわかる。
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◆次回予告
11月21日:冬にこそ食べたい──「鶏塩ラーメンセット」を予定。
澄んだスープと湯気の向こうに、また新しい物語が待っている。
──今日も、いいランチだった。
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