ニャルイ16世・異聞
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からのスピンオフとして別の結末を描いたものです。
ニャルイ16世は革命軍から逃れることに成功した。囚えられ処刑されたのは別人だったのである。
彼は世間の目を逃れてひっそりと暮らしていたが、当然食うに困る。
働こうにも身分を隠す身である。職にありつけない、もとより錠前作り以外なんの特技も持たず、生きるすべがなかった。そう、錠前作り以外には・・
とはいえ、公に錠前作りの商売などできるはずもなかった。
悪いとは知りつつ、背に腹は代えられなかったのである。
ある夜、彼はとある男爵家の城に忍び込んだ。金庫破りをするためである。
彼の錠前作り技術を以てすればその金庫を開けることは容易だった。
彼は大量の金貨を手に入れる。だが彼が手に入れたのは金貨だけではなかった。
「凄いじゃないか!私の技術は!これならもっと大きな金庫だって開けられるぞ!」
自分の技術力に酔いしれた。
それから彼は、もっと難しい金庫も開けられるように、日夜研究に励んだ。
そして、次は子爵家、その次は伯爵家と、どんどん大物を狙うようになった。
彼にとってもはや金貨を得ることは目的ではなかった。
より難しい鍵を征服する歓びだけが彼を突き動かした。
そのために技術を磨くことに精進した。
ついに彼の技術で開けられない金庫はなかった。
しかし、ひとつ見落としたことがあった。
それは、城に忍び込む能力は大したことないということだ。
ついに彼は侯爵家への潜入に失敗し、逮捕された。
いくつも盗みを重ねてきた彼に酌量の余地はなかった。
革命から逃れて1年後、彼はツナ缶の刑に処せられた。
「運命とは結局このようなものなのだろう。だが私は後悔していない、私にとってこの1年間は人生で最も輝いていたにょだから・・」
金庫破りニャルイ16世の残した言葉である。
呪文
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