ノカ大王の即位 大アクサンの成立
終戦交渉の席にはノーチとレネナス王ファクザム、ティバの摂政ヌーカがいた。
テーレナ王家はレネナスに対し賠償金を払わなければならなかったが
そもそも財政的な困窮による交渉決裂が開戦の理由であったため
ノーチはヌーカに借金の申込をしなければならなかった。
ヌーカは大いに不満であった。
自分は再三の仲裁を尽くしたのである。
間抜けな二王家のためではない。
フラール人が平地に攻めてくることが無いとしても、内戦という大きな隙を見せ、しかもそのために軍備が空洞化するようなことがあっていいはずはない。
さらには、戦費の補償の冗長性も担保せず国庫を使い切るなど、この若い王にも後ろにいる王族たちにも統治能力はおろか鉱山経営の能力すらないことに大いに落胆していた。
そうして借金の申込に首を縦に振らないヌーカをみて、今度はファクザム王が
兵士への給与が未払いになっては困るからというので自分の名義で借金を申し込んできた。
怒りを通り越して呆れざるを得なかった。
再三の仲裁をした。だがそうするまでもなく、戦ができるかどうか自分たちの力を見据える力がこの二王家にはなかったのだ。
それが──リジーン──最初の精霊の御告げだったとして
そのあと自分の提案した仲裁、すなわち次なる精霊の御告げ──キュランスティー──を見てもなお思いとどまることなく
事ここに至っては、神の審判──ゲニア──を受けとめる覚悟ができているべきである。
「この程度の因果も分からずに何ぞ国家を徒にするか。我が怒りこそ、ゲニアであると受け止めよ。」
ヌーカは、借金の申込を受け入れた。ただし名義人を自分自身とし、二王家には返済の義務を負わせなかった。
代わりにテーレナの鉄鉱山、ベレーネの炭鉱をティバ王家が買い取った。
二王家の成年王族を残らず出家させ、リジニア教による再教育を受けてもらう。
テーレナとレネナスにはティバ王族と地元の貴族からなる評議会を設置し、
ティバ王家を盟主とした”大アクサン”の成立を認めさせた。
二王家の王族と主立った貴族は、ヌーカを”急進的なリジニア教徒”として詰ったが
もはやどうにもならなかった。
----------
三王家時代の終わり 大アクサンの成立
ノカ大王の即位は、ティバで執り行われた。
紋章はドルガの山と、天に竜、地には青の剣、剣の元にはビオレの水竜が齎した旱魃を癒す水が流れ
アクサンの建国神話を象徴している。
恨めしげにノカ大王を見つめる僧侶は、出家させられたテレナ王家とレネナス王家のメンバーである。
もちろん彼らが実際に参列したはずは無く、リジニア教の因果──リジンゲニアを語るためにわざわざ描き足されたものであった。
三王家時代の終わりによって諸侯乱立の状態が解消され、アクサンは大フラールとの長い対立──ドルガ火山の支配を廻る争い──を終わらせるべく
本格的な戦の準備に入るのであった。
呪文
呪文を見るにはログイン・会員登録が必須です。