最初で最後の悔し涙
中学生になったら本当は野球部に入りたかったけど女子は野球部に入れなかったからソフトボール部に入部した
私は小学生の頃から女子ソフトボール少年団に入っていた甲斐もあって一年生の頃からレギュラー入りできた
慢心せず毎日部活の後、宿題を終わらせたらランニングや素振りなど自主練をしていた
でも私は特別ソフトボールのセンスがあった訳ではなかった
私の学校のソフトボール部で他の同級生より少し上手いくらいでしかない
部としても地区予選で決勝まで上がれずに敗退する程度の実力だった
それでも部活は楽しかった
馬鹿なことして笑ったり怒られたり、喧嘩する事もあったけど楽しかった
私が三年生になって最後の大会
一試合目を勝利し、二試合目のため軽くキャッチボールをしている時だった
監督から声を掛けられた
監督「蒼、ちょっといいか?」
蒼「?」
蒼「はい」
監督の元へ向かい顔をよく見ると険しい顔している事に気付き、何となく嫌な予感がした
監督「さっきの試合のあと〇〇(ピッチャー)が肩を負傷したらしくて次の試合は投げられそうにないと話があった」
蒼「え」
監督「蒼、確か少年団にいた頃ピッチャーもした事あるって言ってたよな?」
蒼「確かにした事もありましたけどメインでしてた訳じゃないですよ・・・まさかとは思いますけど」
監督「…エースが投げられない現状、他の部員達は一度も投手をした事がない。頼めるのは蒼しかいないんだ」
蒼「いや、無理ですよ!もう何年ピッチャーなんてやってないと思ってるんですか?」
監督「・・・・・頼む」
蒼「…」
ここまでの会話は覚えているけど頭が真っ白になってどう答えたかは覚えていない
でも
「はい」以外に答えが無いんだという事は分かった
頭の中がごちゃごちゃになりながらキャッチャーに事情を話して投球練習をした
この時、私は最後の試合を頼れるエースとバッテリーを組む事が出来ないキャッチャーに本当な申し訳ないと思いながら投球練習をしていた
同級生でもあるキャッチャーはそんな私の心情を感じたのか、終始笑顔で接してくれていた
自分だって不安であるだろうに私に笑顔で少しでもリラックスできる様に砕けた話題を振ってきてくれたりして、それが嬉しくて、辛かった
全く身の入らない投球練習を終えて二試合目が始まった
案の定、一方的だった
毎回安打を打たれた
もう私は冷静ではなく、ただ一球一球を投げる事だけに必死だった
チームの攻撃の時はベンチで沈んでいた
それでもみんな声をかけてくれた
「ナイスピッチング!」
「悪くなかったよ」
「ごめん、私のミスのせいで。次は取るから!」
ベンチに戻るたび肩を揉んでくれる子もいた
私たちの最終回の攻撃、ここで逆転しなければ試合終了だ
でもどう見ても返せる点数差ではなかった
私はベンチでチームメイト達が大声で応援したり、一振り一振りに全力を込めている仲間を見ていると自然と涙が出てきて、そんな自分に気がつき更に涙が溢れてきた
隣に座っていた子がそんな私を見て、私の手を握りながら「まだ終わってないよ」と涙を流しながら言ってくれた
私は嗚咽を漏らしながらチームの攻撃を最後まで見届けた
そして試合は終わった
ただただみんなに申し訳ないと思っていた
私のせいで負けた
本当にみんなゴメンと
それから数週間ほど経った学校の給食の時間、担任が突然私に
担任「そういえば〇〇(ピッチャー)が蒼に感謝してたよ。不甲斐ない自分の代わりに蒼がとてもいいピッチングをしてくれたって。感謝してもしきれないってさ」
私はその言葉で救われた
ほぼノンフィクション
今のところ、最初で最後の悔し涙
主人公を蒼ちゃんにお願いしました
呪文
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