本日のランチ
『食彩探訪』11月号特集
「11月18日 香ばしさが教えてくれる“和食の原点”──焼き魚定食」
文・撮影:田嶋 達郎(グルメ記者)
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窓から差し込む柔らかな朝の光が、焼き目の入った魚の皮をきらりと照らす。
テーブルに運ばれた瞬間、香ばしい匂いがふわりと舞い上がり、思わず姿勢が正される。
今日の日替わりは、焼き魚定食。
主役の焼き魚は、皮はパリッと香ばしく、身はふっくらと弾力がある絶妙な焼き加減。
箸を入れると、透明感のある脂がじんわりとにじみ、口に運べば海の旨みが素直に広がっていく。
こういう一皿は、技術よりも“誠意”が味に出る。
丁寧に焼かれた魚には、派手さ以上の説得力がある。
副菜には海藻の小鉢としらすおろし。
海藻の瑞々しい磯の香りと、しらすの控えめな塩気が、焼き魚のコクをやわらかく引き立てる。
さらにもうひと皿、彩り野菜のおひたしが、食卓にほっとする温度を加えてくれる。
ふっくら炊きたての白ごはんを頬張れば、思わず“あぁ、これだよ”と心の中で呟いてしまう。
そして、湯気を立てる味噌汁が、魚の余韻をやさしくまとめ上げ、食事を完結させる。
背伸びしない、飾らない。
それでもしっかり幸せになれる。
和食の底力を感じる、そんな昼のひとときだった。
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◆次回予告
11月19日:ほろりと旨い“肉豆腐定食”を予定。
優しい煮汁と湯気に包まれながら、また新しい一日を味わう。
──今日も、いい昼ごはんだった。
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