小話:たった一日の逢瀬
宵の空を見上げながら、スレッタがぽつりと言った。
星が瞬く夜、ふたりきりのベランダ。地球圏ではタナバタが近いらしい。
「えへへ……なんだか、わたしたちも……そういうの、ちょっと似合うかもって……思っちゃいました」
ミオリネは手すりにもたれて、静かにため息をついた。
「……スレッタ。ちょっと言っていい?」
「え、はい! なんですかっ?」
「“年に一度”しか会えないのがロマンチックだなんて、正気?」
「えっ……?」
ミオリネはゆっくりと振り返ると、スレッタを見つめて言った。
「私と毎日一緒にいるって、あんた……あの時、言ったよね?」
「あ……えっ、あ、はいっ!? 言いました! ちゃんと覚えてます!」
「なら、なんでそんな“一年に一度”なんて遠距離片想いみたいな話に憧れるのよ」
「い、いえっ、そ、そういう意味じゃなくて……っ! なんかその……気持ちが繋がってる感じが、すごく素敵だなって思って……っ!」
「ふーん……」
ミオリネは目を細めた。
「じゃあ私は? 今ここにいる私は、“織姫未満”なの?」
「ちがいますっ! そんな、そんなことないですっ!!」
「“毎日会える恋人”に失礼だって、気づきなさいよね。めんどくさいけど、私はあんたの彼女なんだから」
「……っ」
スレッタは一瞬固まって、それから頬を真っ赤にして笑った。
「えへへ……うれしいですっ……やっぱりミオリネさん、大好き……」
「わかってる。だからそういうの、もっと直接言いなさい。……毎日でもね」
呪文
入力なし