【夢エリ】黒猫への贈り物〜魔女カナビスの顛末
魔王軍カフェにて。
カナビスは黒猫騎士カペラニカに「情報」と「古代の遺物」を託す。
「約束は、ジュネティアに与えられていない。だからせめて、対話の暇を」
そしてカナビスは旅に出る。猫と、呪いを解く術を探すために。
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「別れの贈り物」
最後の目的を果たし、私はある人を待っていた。 魔王軍カフェの片隅。蝋燭の光に照らされたテーブルの前に、黒猫騎士──カペラニカが現れる。
「ずいぶん久しぶりね」 彼女はわずかにためらいながら微笑み、はにかむように視線を落とした。その仕草は昔と変わらず、美しかった。
「今日はお別れを言いに来たの」
「……そう、目的は果たしたのね」
カペラニカは言葉少なに立ち上がり、私をそっと抱きしめた。 長かったけれど、やっとやり遂げた。そう呟いて、その肩に顔を埋める。
再びカフェのテーブルについたあとも、ひとしきりこれまでのことを話した。
黒猫騎士団の暗部に切り込むなかで、私は自然と魔王軍の思惑にも触れてしまったのだ。
「最後に、伝えたいことと……お土産があるの」
テーブルに置かれたグラスの水面が、かすかに揺れる。私は掴んだ一次情報を口にした。
「魔王軍の上層部は、『彼の地』において、ジュネティアさんではなく別の者を国司に据えるつもりらしい」
カペラニカの瞳が揺れ、蝋燭の灯りがその影を深くした。 「それって……」
「ええ、あなたも蜃気楼の宮殿で耳にしたでしょう? ジュネティアさんは虐げられた猫たちのための国を作る。そのために魔王軍に従っているって。 でも、その約束は守られないかもしれない」
「……そんな……」
彼女の拳がテーブルの端を握りしめる。 私は視線を落とし、声を低めた。
「魔王の側近たちにしてみれば、ジュネティアさんがあのウサギの子と相打ちになってくれるのが一番いいんでしょう。領地も分けなくていいしライバルも減る。つまり……」
「使い捨ての駒ってこと? 敵だけど……そんなの許せない」
「みんな誰かを利用しようとしてる。私だって利用されてきたわ。それが普通。 ジュネティアさんは純粋すぎる。『世界の半分をやろう』みたいな魔王の話を、本気で信じちゃってる」
口に出した瞬間、胸が少し痛んだ。 「でも、そんなところが好きなんだけどね」
カペラニカは考え込む。
私は、路地裏の英雄だった頃のジュネティアを思い出していた。弱き者のために力を振るう──あの姿が好きだった。 だが、その理想は、魔王軍に身を置いて果たされるものなのだろうか。
沈黙を破るように、カペラニカが問いかけた。 「……お土産って?」
「これよ」
私は掌に小袋を乗せて差し出した。 袋の中から微かな香りが立ちのぼる。
「魔タタビ」──特に緑猫の王族に強い効果をもたらす古代のアイテム。かつて緑猫の王国が栄えていた頃には珍しいものではなかったらしいが、今では見かけることはない。それが、この夢幻宮の奥深くに、少しだけ、遺されていた。
「ジュネティアさんの技を一時的に封じられるかもしれない」
カペラニカはまじまじと見つめ、手に取る。私は続ける。
「魔王軍の将となった彼女はもう、後戻りできない。でも、これがあれば対話の暇が生まれるかも」
「でも……相当近くまで行って使わないと」
「難しいでしょうね。だからこのアイテムが役に立つかどうかは、あのウサギの子の剣技にかかってる」
短く笑い、私は立ち上がり、マントを翻した。背後でカフェの椅子が軋む音がする。
「じゃあ、またね。死なないで。」
「これから、どうするの? 仇を討ったんでしょ?」
「仇を葬っても呪いは消えなかった。これからは呪いを解く方法を探すための旅に出る。のんびり世界を見ながら、猫と一緒に」
「……そっか」
「でも、呪いがもし魔王の魔法なら……魔王を倒せば何かが変わるかもしれない。けど……」
「じゃあ、一緒に戦ってよ!」 カペラニカは勢い込んで私の手を取った。
だが、私はゆっくりとその手を押し戻す。蝋燭の光が彼女の瞳を揺らしていた。
「……疲れちゃった。あとは、あんたたちに託す」
そう言って、私は微笑んだ。
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※
監督の意向を汲んでるかイマイチ自信がありませんが、こんな感じにしてみました。
カナビスの「贈り物」として、魔王軍上層部とジュネティアさんの軋轢の情報・魔法アイテムをカペラニカに託します。
突破口足り得ますかね?
よろしければご査収ください!
※画素生成プロンプトはRegionalPrompter使用時のモノ
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inspired by:
いわしまん様
【夢エリ】【コラボ募集】 『夢炎剣のエリアーニャ』続編登場につき勇士募集! 8/30~9/7
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おまけ妄想二次創作「猫を吸う」
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