偽書『ダークエルフ賢者の議定書』
世界を牛耳る秘密の組織……その裏にはダークエルフの存在が!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ダークエルフ賢者の議定書』とは、統一暦1700年代後半に発表された南洋エルフ族の有力者達による決議文という体で発表された文書である。
その内容は、南洋エルフ族によって構成された秘密組織が世界を支配するための計画について、詳細かつ極めて露悪的に記載されているものであった。
通常、このような秘密組織が存在するなど荒唐無稽な作り話だと考えられるのだが、当時は『簒奪戦争』によってニドヴァル大陸のパワーバランスが大きく変革している時期であったため、このような陰謀論が受け入れやすい状況にあった。
また、禁呪魔法や世論の操作方法について具体的に書かれていたこともあり、「この書物が世界の真実を示している」と信じ込む者も少なくはなかった。
このため、各地で南洋エルフ族排斥運動が巻き起こったのだが、統一暦1800年代初頭にこの書が捏造されたものであるという証拠が発見された。
作成したのはエルフ族の高官であり、戦後の国内の不満を南洋エルフ族に向けるために作成されたものであると判明したのである。
偽書であることが判明した後は、南洋エルフ族排斥運動も鳴りを潜めたが、それでも未だに『南洋エルフ脅威論』は一部の人々の間では根強く信じられている。
なお、これらの事件の結果南洋エルフ族を『ダークエルフ』と呼ぶことは禁忌とみなされることとなった。(この事件の真相発覚以前は、主に北方エルフが南洋エルフを『ダークエルフ』と呼んで侮蔑することが公然と行われていた)
ニコラ・ジャン・ル・クレール著『書物から辿るニドヴァル大陸の歴史』より抜粋(統一暦1899年出版)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
呪文
呪文を見るにはログイン・会員登録が必須です。