もっとあそびたい
波が静かに砂浜を撫でる音が、さっきまでの笑い声を優しく包み込んでいる。
「そろそろ帰るよー!」
母の声が遠くから聞こえる。
着替えの用意をしているパラソルの下に、みんなが集まりはじめている。
でも、少女はひとり、裸足のままで海の方を向いていた。
濡れた髪からぽたりと水が落ちる。
足元の砂が、少しだけ冷たく感じる。
「もうちょっとだけ……」
そうつぶやくと、彼女は小さくジャンプして、最後のひと波に駆け寄った。
パシャッ、と小さな水しぶきが上がる。
それはまるで、海が「またおいで」と言ってくれているようだった。
風が吹いて、濡れた水着が肌にぺたりと張りついた。
夕焼けが、海と空を溶かしながら、今日という日を閉じようとしている。
「うん。また来るからね。」
振り返った少女は、少し寂しそうに…それでも笑っていた。
呪文
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