アヤナギ荘の日常 #1 -Everyday Ayanagiso-
まだ肌寒い、ある日の早朝のこと。
「春が近づいてきましたね」
縁側でシロキは
湯気の立つマグカップを手に、そう言った。
「んー…まだ寒ぃけどなー」
クロキは隣で大きなあくびをしながら伸びをする。
そしてふと空を見上げて、
シロキは静かに考え込んだ。
「春って何だか、不思議な季節ですよね」
「ほう?」
眠そうな目でクロキはシロキを見つめる。
「桜が咲いたり、暖かくなったり、
色んなものが芽吹くじゃないですか」
「ふむ」
それを聞くと、クロキは少し手を構えた。
そして迷いなく、シロキの白い狼耳をポフポフ触る。
「なら、シロキの耳にも春が来るんか?」
「来ませんよ!!」
突然のことにシロキは驚き、
耳を押さえて顔を赤くした。
どうやらクロキは毛の生え変わり
のことかと思っていたらしい... ...。
呪文
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