青空のいたずら
「あ、ちょっと待って! 帽子が、帽子が飛んでいく!」
アイリスが声を上げ、青いスカートを翻して砂浜を駆け出した。風に煽られた麦わら帽子を追いかけるその姿は、まるで海から生まれた精霊のように軽やかだ。
「わあ、空がすごく青いね! 今日は最高の天気じゃない?」
追いついた時、彼女は麦わら帽子をしっかりと押さえながら、見上げるような青い空に笑みをこぼしていた。だが、その油断した瞬間を、いたずらっ子の風は見逃さなかった。ふわりと、彼女のスカートを優しく、しかし大胆に押し上げたのだ。
「……ひゃっ!?」
彼女は短い悲鳴を上げ、慌てて裾を両手で掴み込んだ。耳の先まで真っ赤に染まり、羞恥と驚きで潤んだ瞳がこちらを向く。
「こ、こら! 風さん、今は空気読んでよね!」
そのあまりの可愛らしさに、私は堪えきれずに吹き出した。
「いや、空気を読んでたのは風の方じゃないかな? 最高の天気に、この景色……最高のシチュエーションを提供してくれたんだから」
「もう、からかわないでよ! 恥ずかしいんだから……」
彼女はむくれて頬を膨らませたが、その瞳には私を試すような、楽しげな光が宿っている。少しの沈黙の後、彼女は照れ隠しのように視線を海へと戻した。
「でも、まあ……悪くないか。この海風も、この景色も」
ふふっと彼女がこぼした笑みは、陽光よりも眩しくて。穏やかな波の音だけが、少しだけ縮まった二人の距離を優しく包み込んでいた。
呪文
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