皇城慰霊公園慰霊塔 (籠ノ鳥:加藤特務中佐)
私は、あの戦争の戦没者を弔うための慰霊公園に来ている。戦争終結後、皇城の一角を慰霊公園として開放し、戦没者慰霊塔を建立した。
転生した国家間の4か国戦争での死傷者数は、僅か3か月間で10万人を超えた。
その中で、機械国家に手を出したヒノイ国の人的損害は最も多く、死者が1万人以上と言われる。
その中で10代の死者は六千人を超え、当時の特殊能力庁長官の予測通り世代間の人口バランスが崩れて深刻な人材不足に陥った。
だいたい異能が優れる者はエリート階級なのでその年代がゴッソリ戦死したのだ。
急に始まった戦争が、なぜ急に集結したのか私にはよくわからない。悪い神を追放したとかなんとか、政治的過ぎてよくわからなかった。
私は当時、皇城防衛に必死で皇城の外にも出られずただ、異能を駆使していた。私の異能を何十倍にも増幅する専門要員がいて、その要員とチームを組んで天候を維持していた。
天候操作の異能者は私だけらしく、やたら丁重に扱われて気味が悪かった。
増幅要員の方が負担が大きくて、相手は毎日変わったし中には任務中に倒れて亡くなる人もいた。
どうも攻撃を受ける際に私に直接向かないよう肩代わりをしてくれていたらしい。
それを知ったのは、戦争終結後しばらく経ってからだった。私は、守られていたと言える。口惜しかった。
特殊能力庁は、加藤特務少尉を絶対に死なせてはならない。彼女は皇城の最後の砦だと他の要員に強く要請していたらしい。
まあ、私以外に天候操作できる者はいなかったことは確かだったらしい。非常に稀な異能だそうだ。
3階級特進の件も断ろうとしたが、当時の特殊能力庁長官から「君は皇城を守り切った英雄なのだということにしてほしい」と土下座されては断れなかった。
そして、今後も皇城から出れないことも。高度な政治的要因で私が籠の鳥と言うことも。まあ、誘拐防止である。
長官は顔傷のあるヤクザのような怖い容姿だったが、将来のために最も若い者の戦死を嫌っていた。私は個人的に好きになったくらい凄い人だったよ。
今では皇城警備直属上司となっている・・・というか私には正確には上司がいないんだ。
厳密に言うと本当の直属の上司は皇城皇主様、徳仁皇主になる。事実上の皇族の係累になった。だから皇城を出ることは出来ない。
両親に会うのは自由だが、会いに来てもらう形で私は外に出られない。
結婚も皇族の係累の誰かとするらしい。この能力を継承するのが目的になった。だから籠の鳥という訳。
「英雄かあ・・・・。嘘ではないけど私を守って何人も殉職したんだよね。その人は事故死扱いだもんね」
今日の桜は本当の春のものだ。私の偽りの異能ではない本当の春の桜だ。
「加藤特務中佐殿、そろそろ会議の時間です」年齢は同じだが階級は中尉の副官が囁く。
そうだ、今日から特務中佐だったんだ。24歳で中佐なんて異常かと思うが、それだけ同年代が戦死しすぎて若手将校が少ないのだ
「ああ、申し訳ない。ボンヤリしていた。行こうか中尉」
「はい特務中佐殿」副官は踵を返して歩き始めた。
私は慰霊公園を振り返った。慰霊塔を覆うように桜が咲いていた。
今日も桜は美しかった。
(この世界では、軍学校を卒業せずに将校となると肩書に特務と付く。特殊技術を持つ者が多く、実際の肩書よりも高位になる)
※辞令 加藤晴美特務少佐殿
特殊能力庁長官ヨリ通達
2028年4月1日ヲモッテ 特例二ヨリ加藤晴美特務少佐ヲ特務中佐二昇進ヲ認ム
ナオ加藤晴美特務中佐ハ 皇主特例二ヨリ皇族係累二加エル事を認ム
以上
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