出張!談ちゃん〜スーパーちちぷい編〜
店の一角に畳と座布団が設置され、談みすずの講談会 in スーパーちちぷい東京下町店が開催(無料講演)。
談みすず「皆さまこんにちは。肩出し講談師、談みすずでございます。本日はこの格好――そう、肩は出てますけど、エプロンつけて、店員風でございます。」
談みすず「私は講談師をやっておりますが、まだまだ未熟者かつこれ一本では食っていけません。スーパーでアルバイトをしておりましてその中での感じた事をいくつかご紹介。」
私、スーパーでアルバイトで野菜売り場を任されてた時の事、ふと立ち止まってしまったのが、ナス売り場。
ナスって、あの深い紫、つややかな表面、
何だか…こう、人生の“渋み”を感じません?
私、思わず一つ手に取って、話しかけてました。
「君はいいよねぇ。煮ても焼いても、美味しいって言われて。
私はね、煮ても焼いても“変な衣装ですね”って言われるのよ」
ナスは黙ってましたが、聞いてくれてる気がしたんです。
なのでさらに、
「ナスくん、あなたに比べたら私はツヤが足りない。
この肩の肌ツヤも、最近は乾燥がひどくてね・・・」
ってつい言ったら、後ろからおばちゃんがひとこと。
「それ、たぶんナスじゃなくて“美容外科の先生”に言った方がええよ」
おばちゃん、正論!!
でもね、そのあとナスをカゴに入れながら、ちょっと思ったんです。
「派手でも地味でも、人間、味が出るのは火が通ってから」
ナスも人も、煮詰まってこそ味わい深くなるのかもしれませんね。
その後、山積みにされたサツマイモと、目が合いました。
その見た目はおとなしげで、
どことなく控えめな紫。
でも中身は、
甘くて、ホクホクで、子供にもお年寄りにも大人気。
私はひとつ手に取り、心の中で語りかけました。
「君って…いいよね。
見た目と中身のギャップでモテるタイプだよね」
けれど、サツマイモの人生(イモ生?)を想像すると――
決して楽じゃない。
地中深く、じっと育ち。
誰にも見られず、雨の日も風の日も、ただ耐える。
掘り出されたら今度は、
「甘くなれ」と言われて寝かされ、
それでも足りないと、焼かれ、蒸され、揚げられ。
ようやく食卓にのぼる頃には、
すっかり「おやつ担当」。
それでもサツマイモは、文句を言わず、ただ甘い。
なんか…泣けません?
私もかつて、深夜イベントでスベった後に、
楽屋で冷めた大学いも食べて泣いたことあります。
人に甘くあるには、
まず火にくぐらねばならぬ。
そう気づいた私は、サツマイモを手に、誓いました。
「よし。私も…焼かれても、煮られても、
語るだけは、やめないぞ」
と、その時パートのおばちゃんがひと言。
「焼かれて煮られても語る人、スーパーではあなたぐらいよ」
ありがたきお言葉・・・
そう、私は唯一無二の講談師になるべく語り続けます。そうあのナスやお芋のように・・どうぞ今後ともご贔屓に・・
またお会いしましょう。
談みすず「あ、普段は浅草で講談会を定期的に開いてますので、よろしくお願い致します。」
呪文
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