#15 死後チートライフ
レオはノートパソコンをスクロールしながら、不満げに『死後チートライフ』の最新話を睨みつけた。
「どうせ口喧嘩で勝てないからって、俺をずっと誰かに振り回される残念キャラにして、最後には脳みそやられるなんて、どういう仕打ちだよ!」
「何度も言ってるけど、あれはフィクションじゃなくて実話だってば」
机の前でポテチをかじりながら、ハンナがぶっきらぼうに答える。
「頼むよ。小説のハンナはテレポートしまくりで、中継所の使者も手も足も出ないとか、誰が信じるんだよ?」
レオは白目をむきながら、一段の描写を拡大した。
「てか、あんた中継所行ってないだろ? どうして中のこと知ってるんだ?」
「えっと……他の魂にインタビューした体験談を……まあ、ちょっと脚色したかな」
ハンナは頭をかくと、ややバツが悪そうに言った。
「脚色ねぇ~」
レオは笑いながら指をさす。
「結局、自分をすごく見せたかっただけじゃん? “魂の使者”だの、“天国の夢”だの、“洗脳システム”だの、全部あんたの妄想なんだろ?」
「見たって言ってんでしょ、私は実際にあったの!」
ハンナは声を張り上げてレオを睨む。
「しかもさ、霊体としてフラフラしてたハンナが、突然レオと一緒に転生するって? 挙げ句の果てに割り込み? 無理やり過ぎるでしょ、その展開」
レオは編集者気取りで腕を組む。今にも「この章はボツで」と言い出しそうだった。
ハンナはしばらく沈黙し、ポテチを置いてため息をついた。
「本当は話すつもりなかったけど……まあ、あんたの頭じゃ理解できないかもね」
「なんだと?」
無視して、ハンナはまじめな口調に変わった。
「私が転生を決めたのは、ある“すごい人”に出会ったから」
「すごい人って……一日八杯ごはん食べられる人?」
レオは半笑いで返す。
「バカ!」
ハンナはレオに目線を投げつけ、話を続けた。
「その人は生前にスピリチュアル教団を立ち上げて、魂を自由にする方法を研究してたの。ある技術を習得すれば、輪廻から抜け出して完全に自由になれるって言ってて、教典まで残してあるんだよ」
「うさんくさっ」
レオは引きつった笑みを浮かべた。
「騙されてない?“魂を清める水”とか言って、一瓶2万円とかで売りつけられたりして」
「はあ〜、まったく……」
ハンナは額に指をあててため息をついた。
「この街がその教団の本部なの。私が転生先を探してたとき、偶然あんたの魂の波長を感じて、“あ、コイツまだ騙されてんな”って思って助けようとしたのに」
「それ以降、文句ばっかり!ほんと使えないわね」
レオは黙り込み、腕を組んで何か考えていた。
確かに、姉のハンナは昔から他の子と違って、どこか達観していた。
もし本当に前世の記憶があるなら、あの知識量にも納得がいく。
でも、そうなると――自分はただの“洗脳されたマヌケ”ってことになるわけで、それだけは認めたくない!
「ま、いいや。どうせ今は高校生だし、まずは勉強して金稼いで、会社立ち上げて社長になって……」
レオは急に顔を明るくして、夢を語り出す。
「秘書は美人、車はスポーツカー! 最高の人生!」
ハンナは肩をすくめて、小さく笑った。
「じゃあ、夢の社長ライフ楽しんでね。私は教会に行かないと」
「またそのスピリチュアル教団?」
レオは眉をひそめた。
「本気で信じてるの?“魂が見える水晶玉”とか買わされないようにね」
ハンナは立ち上がり、服についたポテチのカスをはらいながら言った。
「いつか本当のことを知りたくなったら、その時は自分で探しに来なさい」
そう言い残し、彼女は振り返ることなく部屋を出ていった。
午後の光が窓から差し込み、彼女の背中を長く照らしていた。
――
ハンナが教会に足を踏み入れると、受付の女性が静かに立っていた。
肩に付けられた教団の紋章が、陽の光に照らされて金色に輝く。その光は、何か秘密を隠しているように見えた。
そして、少し離れた場所からその姿を見守るレオは、言葉にならない感情を抱えていた。
いつか彼も、この教団の秘密を知るために足を運ぶ日が来るのかもしれない――
でも、少なくとも今ではない。
何しろ、普通の高校生である彼には、来週のテスト範囲を覚えることで精一杯だったのだから。
「ちくしょう……」
(第一シーズン・完)
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