ウシ娘
レスランドには三種の牛が存在するといわれている。
一つ目は農畜産物としての畜農牛。飲んで良しの牛乳、食って良しの牛肉、撒いて良しの牛堆肥。畜農牛はレスランドの根幹を担う一つである。
二つ目は平時は農耕、有事は装甲を纏って騎兵と共に敵兵を踏みつぶして邁進する重騎牛。彼らがいれば敵の陣形は紙同然である。
三つ目は伝説でしか残っていない巨牛神。はるか昔に牛を遊びで殺し回った貴族に怒り、降臨したと伝えられている。レスランドのとある場所に牛山という山があるが、不思議なことにこの山はいつも堆肥の匂いがするという。かつて降臨した巨牛神の糞であり、下には愚かな貴族が今でも汚物に苦しんでいると伝えられている。
実はまことしやかに噂されているもう一つの牛がいる。
ウシ娘である。地域性か民族性かは不明だが、ウシ娘はごく一部地域での話だ。
ウシ娘はとりあえずでかい。どこがとは言わないがでかいのである。
ただ一つ、注意が必要だ。彼女らの面前でウシ娘などと口にすれば、巨牛神の加護を加えた回し蹴りを食らうことになるだろう。下手すると頭の前半分が消し飛ぶ威力らしいぞ。
気をつけろよ、俺は運よく顎の形が変わる程度で済んだけどな!
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