我がまま妹、里を飛び出す
偵察からの帰路につき、もう少しで帰り着くというところで、ヤナギは聞き慣れた自分を呼ぶ声を聞いた。
態々顔を向けずとも、正面からその主が飛んできて、彼の胸もとに飛びついた。
「酷いのじゃ兄上! わらわに黙っていつの間にかいなくなるなんて、はくじょーものなのじゃ!」
ポカポカとヤナギを叩き怒りながら、その目を涙で潤ませる彼女は、末の妹ツバキである。
ヤナギが偵察に出かけると言った時、ついて行くとしつこくしがみついて譲らなかった。
それ故、ヤナギは翌朝、彼女が起きてくる前にさっさと里を出て行ったのである。
「何を言うか。 おぬしがはよぅ起きる習慣をつけとらんから、出がけの挨拶ができなかったんじゃろうて」
ヤナギがそう言うと、ツバキはぷっくりと頬を膨らませて無言の抗議をする。
実際のところ、ツバキは一族で一番起床が遅い。
だが、まだ八つの幼子であるが故、それは仕方が無い面もあるのだ。
「……兄上はいじわるじゃ」
ふんと拗ねてしまった妹を、ヤナギはやれやれと抱き上げる。
「このまま里に飛んで帰るぞ。 しっかり掴まっとれよ」
そう言って、彼は風を捕らえて再び里へ向かって進み始める。
その胸の中で、ツバキは不服そうに、しかしどこか満足げに口元を緩めながら、小さく頷くのであった。
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ヤナギについて→ https://www.chichi-pui.com/posts/65b0785e-1d91-4504-880a-f75fb1dd1268/
ツバキについて→ https://www.chichi-pui.com/posts/f2bc12d3-199d-4f1f-a3ca-5d5c3fb03c2e/
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