おばけと、こわくて、あったかい夜
【1】ふらり、ふらり。廃寺のほうへ
ある夜のこと――
ももほうくんは、満月に誘われて、
ふらふらと森の奥へお散歩に出かけました。
道なき道をぴょこぴょこと進むうちに、
ひとつの古びたお寺にたどりつきました。
ももほうくん「……ふに?」
屋根は崩れ、木々に埋もれた廃寺。
けれどどこか、あたたかい空気がただよっています。
【2】なにかいる……もにゅっ?
ももほうくんが境内に足を踏み入れたそのとき――
風もないのに、カラン……と鈴が鳴りました。
そして――
本堂の影から、ゆらっ、ゆらっ、と白いものが……!
ももほうくん「もにゃあああ!?(驚愕)」
おばけ!おばけがいっぱい!
ふよふよと浮かぶ、もやもやの群れに、ももほうくんは思わず後ずさりします。
【3】「なんだ、見えるのかい?」
おばけのひとりが、くるんと回って、
ももほうくんに近づきました。
おばけ「久しぶりに“見えるやつ”が来たなぁ。おまえ、何者だい?」
ももほうくん「……ぷに?ももほうくん。……おばけ、こわく、ないの?」
おばけたちは首をかしげ、そしてにっこり笑いました。
おばけ「怖がらせるつもりはないさ。
ここに縛られたまま、ずっと誰とも話せずにいたんだよ。
君が来てくれて、うれしかったんだ」
【4】みんなで“びっくりだるまさんがころんだ”
ももほうくんは、少しずつ怖くなくなってきました。
そこでおばけたちに、遊びを教えます。
「だるまさんがころんだ!」
「……びっくり!!!」(ももほうくん、転ぶ)
おばけたちは、ももほうくんの予測不能な動きに大笑い。
廃寺に久しぶりの笑い声が響きます。
【5】夜明けと、おばけの消失
夜が明けはじめると、おばけたちはふわふわと薄れていきます。
おばけ「ありがとう、桃色のこ。おかげで少し、楽になったよ」
「また、誰かと出会える気がするんだ」
ももほうくん「また……くるね。こんどは、おやつ、もってくる」
【6】エピローグ:廃寺の朝
朝日が射し込むなか、
境内には、落ち葉で作られた「ありがとう」の文字が残っていました。
ももほうくん「ふに……あったかい、おばけだったなぁ……」
🌕👻あとがき:
“怖いもの”って、ほんとうに怖いだけじゃない。
知らなかったら、気づかなかった“やさしさ”や“孤独”もある。
そんなことを、ももほうくんは、ひとつ覚えました。
呪文
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