そもそも人形に記憶とかあるわけなかった
話の流れとしての前回はこちら。
https://www.chichi-pui.com/posts/e0d39a2b-641c-436c-915b-0b910ed9ed33/
(ざっくりあらすじ)
緑色の着物でいろいろでっかい化け狐が呪いのからくり人形に稲荷大神様から賜った刀を奪われて取り戻す為に手掛かりをもとに探していたら稲荷神社総本社にたどり着いていたのでした。
サブストーリーにえろえろしいエピソードとかもあったりなかったりなので #廃神社のはぐれ狐 タグからR-15とかR-18とか辿ったら見られます!(宣伝)
社務所で受付をしている狐やお参りの列を整理している狐、見廻りをしている狐。
彼女以外にも化け狐がいる事は知っていたが、これだけ当たり前のようにたくさんいるものだとは思っていなかった。
それも、社会性を持ってこの神社に遣えている様子が窺える。
「ああ、やはり。稲荷大神様のおわす総本社だ。ここにご移転されておられたのか…」
彼女は懐かしみ、嘆息していた。
稲荷大神。もちろん私も一般的な知識で穀霊神・農耕神としては知っている。
ただ、そうだ。
この化け狐が恩を受け、そしてこの旅に出るきっかけとなった刀を下賜されたという神がその稲荷大神で。
それが巡り巡ってその神の鎮座される神社にたどりついたのだ。
本来、何の関係もなく成り行きでついてきただけの人間の私も感慨とともに偶然ではない因果の中にあるのだと感じるのは当然だった。
――それはそうと。
呪い人形の腕はなおも健気に(?)進んでいる。
木製の腕が境内の玉砂利をざくざくと進む様子は異様、なはずなのだが不思議と参拝客も狐達もあまり気にしているようではなかった。
その理由はその先に視線をやってすぐに理解する。
"ヘイラッシャイヘイラッシャイ。オマイリハ、コッチダヨー"
人間ではない、木を擦って人に模したような独特な音声が聞こえてきた。
「あいつ…か?」
――私に聞かれましても…。ただ、ええ、仰りたいことはなんとなくわかります。
木製のからくり人形であることは動きや材質でわかる。
が、あれはあまりにも、神社という場に馴染んでいて、彼女が大怪我を負うほど凶悪な呪い人形だとは到底思えない。
そんなのが呑気に境内の案内をしているはずがないのだ。
「ああ、意味がわからん。問い詰めた方が早い」
ずかずかと歩み寄り、他の参拝客の後ろから声をかけた。
「おい、そこの人形よ」
"アレ?ヨウコソー、ハジメマシテ"
地面の腕を拾い上げて持ち主と思しき人形へ掲げて見せる。
「これは儂が斬り飛ばしたお前の腕だった、はずの、ものだ」
自信が無いのか、歯切れの悪い言い方で人形へ詰め寄る。
"エー???ナニソレ?"
腕はわきわきと手を開いたり閉じたりして、主の元へ戻ろうとしているようには見えたが、その当人(当人形?)は知らないと言う。
「覚えておらん、だと。いや、確かにあの禍々しい人形と似て非なる、ヒト違い、人形違い、か?」
化け狐は怒りのやり場を失って混乱しているようだった。
他の参拝者達は我々からちょっと離れて迷惑客が来た感でこちらを見ていた。少し気まずいので"すいませんすぐ終わりますので"と小声で謝りながら両手をあわせて周囲にぺこぺことお辞儀をする。
"ア、オレ、イッカイブッコワサレタカラカモ。バチコーンッテ"
思い出したように人形は言った。
「壊された…。では、ええと、どうしたらいい」
彼女も周囲の視線を集めているのに気付いて焦ったのか私の方を振り向いて珍しく意見を求めてきた。
――誰かに事情を聞くとかできないでしょうかね。この人形は何も覚えてないでしょうし。
私からすればそもそも人形が意思を持って喋ってるのが怖くて関わりたくないのもあってそう提案をしたのだが、彼女も、最もだな、と頷いた。
では、手近な狐に声をかけようかと見廻した所で背後から大きな声がした。
「参拝客の皆さん、その二人から離れて下さい!」
参拝者達はどよめき、我々から離れる。
私は緊張して振り返り、そして彼女はめんどくさそうに振り返った。
「あの、何か御用でしょうか。ウチの一派でもなく、どこの眷属でもない、呪い狐の方が」
振り返れば眼鏡に巫女装束の若い狐が警戒心も露わにこちらを睨んでいた。
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ちちぷい投稿でちまちま続けてきましたがここからは
#廃神社のはぐれ狐 #稲荷神社と娼館の化け狐達 両方のタグで続きます。
基本的には緑色の着物をきている、枯葉と書いて『こよう』と自称している化け狐側でストーリーは進みます。
『放浪旅編』の纏めフェーズなので短いスパンで投稿していきたいなあ…。
呪文
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